英国はTPP11によるブレグジット後の関係強化に注目

(英国、日本)

ロンドン発

2018年12月26日

英国では、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)について、現地紙「フィナンシャル・タイムズ」が10月31日、米国が関税障壁を引き上げたり、中国との貿易戦争を続けたりしている状況と対比し、TPP11の(12月30日の)発効は自由貿易の類まれなる勝利だと評した。TPP11によって、カナダやオーストラリアに対する農産品に係る日本の関税が削減・撤廃されることは、米国の農業には大きな痛手になり、日本にとって、ワシントンから(2国間交渉において)譲歩を引き出すための圧力になるとした。

また同紙は10月8日付で、安倍晋三首相へのインタビュー記事を掲載し、安倍首相が英国のTPP11参加を「両手を広げて」歓迎し、TPP11のさらなる拡大に意欲的なことを紹介。一方で、同首相は英国のEU離脱(ブレグジット)について、「日本企業を含む国際経済への悪影響が最小限になることを望む」と述べた。他の現地紙でも、英国に進出している日系企業は1,000社を超え、約14万人の雇用を創出しているなど、合意なき離脱(ノー・ディール)による、在英日系企業への悪影響を懸念する報道がみられた。

英国は2019年3月29日午後11時(英国時間)にEUを離脱する予定であるため、EU以外の国・地域との貿易関係の強化が急務となる。そのため、政府は2018年7月から、米国、ニュージーランド、オーストラリアとの自由貿易協定(FTA)協議に加え、TPP11参加に向けた意見公募を開始した。リアム・フォックス国際通商相は11月30日の演説で、この意見公募について言及した際、前述の安倍首相のコメントにも触れ、英国内に向けてTPP11などへの参加の意義をアピールしている。国内では、ブレグジットについて先が見えない状況のまま年末を迎え、EUとの合意なくブレグジットとなる懸念が残る中(2018年12月19日記事参照)、英国ではTPP11発効について関心が高まっている。

(木下裕之)

(英国、日本)

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