英政府、ノー・ディールへの準備加速を承認
(英国)
ロンドン発
2018年12月19日
英国政府は12月18日に閣議を開催し、合意なくEUからの離脱(ブレグジット)となる「ノー・ディール」への準備を加速することを承認した。テレーザ・メイ首相は12月11日に予定していたブレグジットに関するEUとの合意案の議会採決を見送り、議会再開後の2019年1月14日の週に改めて採決を行う意向を明言しているが、ブレグジットをめぐる議会の紛糾は収まっていない(2018年12月18日記事参照)。
そうした中、ジェレミー・ハント外相やサジード・ジャビド内相など一部閣僚がノー・ディールの影響を最小限に抑えるシナリオを準備すべきだとメイ首相を説得し、閣議が開催された。閣議では、内務省や環境省、歳入関税庁(HMRC)など25以上の省庁に20億ポンド(約2,840億円、1ポンド=約142円)を配分することを承認した。ノー・ディールの場合には関税手続きに大きな影響が出ると予測されており、HMRCは3,000人の人員追加や円滑な手続きのためのITシステムなど新技術の導入を急ぐ。
また、ガビン・ウィリアムソン国防相は閣議後、ノー・ディールとなって各省から緊急に求められた場合に備え、予備役の人員も含め3,500人をすぐに派遣できる状態にすると発表した。産業界に対しては、HMRCが8万社にノー・ディールの際の関税や規則に関する100ページに及ぶ説明文書を送付する。
ノー・ディールに関しては、政府が8月から10月にかけ、広範な分野での対応を示した106種類のガイダンスを発表した。HMRCは10月に通関手続きなどの準備を支援するガイダンスを、11月にはその詳細版
を公開している。また、財務省とともに関税、付加価値税(VAT)、物品税に関する法令整備も順次進めている。
懸念が消えない中、リスクを最小限に収めるべく政府は対応を加速させる。もっとも、EUとの合意を取り付けることが最優先とするスタンスは依然として変えていない。
(木下裕之)
(英国)
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