英国はブレグジットを一方的に取り消し可能、CJEUが裁定

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年12月11日

EU司法裁判所(CJEU)大法廷は12月10日、英国はEUからの離脱通知を一方的に取り消す自由があるとする裁定を発表した。離脱通知の一方的な取り消しの可能性とその条件に関する、スコットランドの裁判所の要請に基づく裁定で、12月4日にCJEUの法務官が発表した意見書(2018年12月5日記事参照)を概ね踏襲した。英国での離脱協定の承認に関する議論にも影響を与えそうだ。

取り消し後もEU残留条件は変わらず

CJEUは、EU基本条約に離脱通知の取り消しに関する規定がないことに触れ、加盟国のEU離脱を定めた同条約50条1項の規定が取り消しにも適用されると判断、加盟国の憲法に基づく手続きにより一方的に取り消しが可能だとした。

CJEUは加えて、EU離脱を通知した加盟国がその通知を取り消すには、EUと当該加盟国の間で締結された離脱協定が発効していないこと、もしくは、離脱協定が妥結していない場合は通知から2年以内(交渉期間の延長が認められた場合はその期間内)であることが必要だとした。一方、離脱の意図を通知した加盟国を強制的に離脱させることは、EU市民のより緊密な連合を構築するというEU基本条約の目的に反すると指摘した。

今回の裁定は、取り消し後の加盟国のEU残留条件についても言及し、加盟国としての地位は変わらないとした。英国の場合、もし離脱通知を取り消せば、共通通貨ユーロや国境審査を廃止するシェンゲン協定などへの不参加、EU予算の払戻金(リベート)は維持されることになる。

また、CJEU法務官の意見書と同様、裁定への付託をそもそも不採用とすべきとした英国政府の主張と、通知の取り消しには欧州理事会の全会一致の合意が必要とする欧州委員会とEU理事会(閣僚理事会)の主張は、ともに退けられた。

(村岡有)

(EU、英国)

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