シンガポールとマレーシア、ジョホール州の領海・領空問題で1月に協議へ

(シンガポール)

シンガポール発

2018年12月20日

シンガポールとマレーシア両国政府は領海と領空をめぐり対立を深めており、2019年1月中にも事態改善のため協議を行う予定だ。シンガポールのコー・ブンワン運輸相は12月12日、2019年1月第2週に協議を行うことで、両国外務省が調整したことを明らかにした(チャネル・ニューズ・アジア2018年12月12日)。

両国は、マレーシア政府が10月25日付の官報で、同国南部ジョホール州ジョホールバルの港界線をシンガポールが主張する領海内に変更したのを機に対立。シンガポールのコー運輸相が12月4日の会見で、港界線の変更以降にマレーシアの港湾当局の船舶が、シンガポール側が主張する領海内に複数回にわたり侵入したとして、厳しく抗議した。シンガポール海軍と沿岸警備隊は現在、24時間体制で警備している。シンガポール運輸省は同日付の声明で、「われわれの領海域に侵入し、事前許可なしの行動をすることに対し、確固とした対抗措置を取ることを辞さない」と警告していた。その後、マレーシア側がシンガポールが主張する領海内から一部船舶を退かせたことに対し、コー運輸相は12月12日、「これは正しい方向への一歩だ」とし、緊張緩和への措置を歓迎すると述べた。

また両国は、シンガポール北東国境近くのセレター空港の拡張に伴う新たな航空機の誘導装置の設置について、両国の管制空域問題で対立を深めている。マレーシアのアンソニー・ローク運輸相が12月4日の国会で、南部ジョホール州の航空管理を2019年末から2023年にかけて段階的にマレーシアに戻す計画をシンガポール政府に11月19日付で伝えていたことを明らかにした。

2国間関係、改善から再び対立も

マレーシアのナジブ前政権(2009年4月~2018年5月)の下では、マレーシア鉄道用地返還や、ジョホール州からシンガポールへの水供給契約更新など、シンガポールとの一連の懸念問題が解決した結果、それまでのぎくしゃくしていた関係が著しく改善していた(2011年7月25日記事参照)。ローク運輸相は2018年12月5日にシンガポールとの交渉に前向きな姿勢を示し、「(新政権は)シンガポールとの協議において、対決姿勢は取らない」と表明している(マレーシア国営ベルナマ通信2018年12月5日)。しかし、今回の領海や領空問題をめぐって、2国の関係が再び、対立に向かうとの懸念が高まっている。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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