新政権が国家石油精製計画を発表、7カ所目の製油所新設

(メキシコ)

メキシコ発

2018年12月13日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称:AMLO)大統領は12月9日、国家石油精製計画を発表した。既存の6カ所の製油所の改修とともに、7カ所目となる新製油所をタバスコ州ドス・ボカス港に建設する内容だ。これにより、2022年には国全体で1日当たりの精製能力を186万3,000バレルに引き上げる計画だ。

新製油所は1日当たり34万バレルの原油精製能力を持ち、17万バレルのガソリンと12万バレルの超低硫黄ディーゼルを精製する。新製油所におけるガソリン精製量は、現時点の輸入量の3割に相当する。新製油所は1,300人の直接雇用と6,000人の間接雇用を生み出す。また、建設期間中のピーク時には直接・間接合わせて13万5,000人の雇用創出効果が見込まれる。大統領によると、2019年3月までに入札を実施し、建設工事の請負業者を決定する。投資額の詳細は未発表だが、既存製油所の近代化と合わせ、2019年にはメキシコ石油公社(PEMEX)の投資予算を750億ペソ(約4,200億円、1ペソ=約5.6円)増加させるとしている。

財源確保が課題

前のエンリケ・ペニャ・ニエト政権時に起きた製油所老朽化に伴う事故などの影響により、ガソリンやディーゼルの国内生産は減少を続け、それを補うために輸入が増加した。ガソリンの国内生産は、2013年の1日当たり平均43万7,300バレルから2017年には25万7,000バレルに減少し、輸入量は35万8,300バレルから57万200バレルに増加した(図参照)。新政権の国家石油精製計画が予定どおりに進むと、2022年のガソリン精製量は1日当たり78万1,000バレルに達するため、国内需要をほぼ満たすことになる。

図 メキシコのガソリン販売・生産・輸入量の推移

問題は、計画実現のための財源の確保だ。大統領はPEMEXの予算増加を、石油収入安定化基金からではなく、歳出予算における人件費など経常支出の削減で賄うとしている。しかし、新政権が想定するほどの財源が確保できるかどうかは微妙な状況だ。最高裁判所は12月7日、既に施行されている連邦公務員報酬法(2018年11月7日記事参照)の適用差し止めを命じた。これにより、少なくとも憲法94条で任期中の給与削減が禁止されている裁判官の給与は当面削減できないほか、大統領の給与として想定している月収10万8,000ペソの憲法上の妥当性が問われることとなる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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