連邦公務員報酬法が施行、給与に上限

(メキシコ)

メキシコ発

2018年11月07日

政府は11月5日、連邦官報で連邦公務員報酬法を公布し、翌日に施行した。ただし、公務員の給与は毎年の連邦歳出計画で定められており、適用は2019年1月1日からとなる。同法は2009年8月に公布された憲法第127条の改正を実行に移すもので、全ての公務員は大統領を上回る報酬を受け取ることができなくなる。

対象となる公務員は立法府、司法府、省庁等の公的機関(独立公的機関含む)、連邦行政裁判所、連邦検察庁(PGR)、大統領府、連邦政府地方支部、国営企業で働く労働者(第2条)。州政府や地方自治体の公務員は同法の対象外だが、地方公務員であっても憲法上は大統領の給与を上回れないため、今後は全国の州議会などで同様の立法措置が行われることとなる。

連邦公務員報酬法は、9月1日に開会した7月の総選挙後の新国会において、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)次期大統領が早期成立を目指していた12の重要法案の1つ(2018年7月17日記事参照)。与党連合が過半数を占める国会において9月13日に可決されていた。

同法第6条は、公務員の給与の上限を大統領の給与に制限するだけでなく、いかなる公務員の給与も上級職位の給与を上回ることはできないと規定しており、大統領の給与が大きく削減された場合は多くの公務員が影響を受けることとなる。AMLO氏は、自らの給与を現大統領給与の6割減となる月額10万8,248ペソ(約61万7,000円、1ペソ=約5.7円)に減らすとしている。増税を一切行わずに社会的支出やインフラ投資を拡大することを目指す次期政権にとって、公務員の給与削減による経常的支出の削減は大きな財源である。AMLO氏は、現行で年収が100万ペソ(月給で約8万3,000ペソ)を超える管理職の給与をカットする意向を表明している(主要各紙)。

進出日系企業のビジネス環境整備活動に影響も

メキシコ日本商工会議所のビジネス環境整備活動において経済省や国税庁(SAT)の窓口となっている局長補佐や中央管理官の給与を連邦政府の情報公開サイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで検索すると、経済省の局長補佐の月給(グロス)は8万6,747.81ペソ、SATの中央管理官は14万9,651.18ペソとなっており、ともに給与カットの対象となる。民間部門との給与格差が広がることにより、日系企業にとって重要な相談窓口であるこれら管理職レベルが退職する可能性もあり、行政レベルの低下に加え、進出日系企業のビジネス環境整備活動にも支障が出ることが懸念される。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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