鉄鋼とセメント大手が大規模発電事業を計画

(メキシコ)

メキシコ発

2018年11月21日

鉄筋や線材製造の鉄鋼大手デアセロ(Deacero)は11月12日、米系ファンドのブラックストーンが出資する電力事業者フィステラ・エナジー(Fisterra Energy)と合弁で、グアナファト州に発電能力1,350メガワット(MW)の天然ガス・コンバインドサイクル発電所を建設すると発表した。デアセロの同州セラヤ工場は、合弁会社から20年間にわたり、250MWの発電能力の供給を受ける。余剰分は電力卸売市場を通じて売電されるもようだ。

また、セメント最大手のセメックス(CEMEX)は11月15日、共同出資者を募るかたちで3億2,000万ドルを投じ、サカテカス州に378MWの発電能力を持つ太陽光発電パークを建設する計画を発表した。自社消費のほかに売電も計画している。CEMEXのエネルギー部門は、サンルイスポトシ州で発電能力230MWの天然ガス火力発電所、オアハカ州とヌエボレオン州でそれぞれ230MW、250MWの能力を持つ風力発電パークを運営している。操業コストの4割近くを電力代が占めるため自家発電事業に積極的だ。

CFEの産業用電力価格の上昇が背景に

こうした民間企業による大規模発電事業計画の背景には、電力庁(CFE)供給の産業用電力料金の上昇がある。過去1年間の中圧、高圧の価格動向をみるといずれも上昇傾向にあり、2018年1月と11月の使用電力量料金(中間時間帯)を比べると、中圧で約2.1倍、高圧で約2倍に上昇している(図参照)。CFEの送配電独占による非効率な経営が、中間流通コストを上昇させ、最終販売価格の高止まりを招いている。

図 電力庁(CFE)の産業用電力料金の推移(バヒオ地域)

メキシコでは2013年末以降のエネルギー改革に基づき電力卸売市場が創設され、電力需要が1MWを超える大口需要家は電力供給事業者の選択が可能となり、発電事業者は出資関係がない大口需要家への売電も可能となった。風力と太陽光のポテンシャルが高いため、再生可能エネルギー発電や高効率の天然ガス・コンバインドサイクル発電を中心に民間企業による発電能力の増強が進んでいる(2017年12月25日付地域・分析レポート参照)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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