米鉄鋼団体、USMCAは米国産の需要高めると公聴会で評価

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2018年11月22日

米国際貿易委員会(USITC)は11月15~16日に、北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の経済影響に関する公聴会を開催した。自動車業界の反応(2018年11月22日記事参照)に続き、その他の業界団体の反応を紹介する。

鉄鋼業界団体の米国鉄鋼協会(AISI)、米国鉄鋼製造業者協会(SMA)はUSMCAへの強い支持を表明した。AISIシニアバイスプレジデントのケビン・デンプシー氏は、「USMCAは米国の鉄鋼製造業者にとって有益な協定」と述べ、特に自動車に用いられる鉄鋼の70%以上を北米産とする原産地規則は「米国産鉄鋼の需要を増加させる」と評価した。電気炉メーカーの団体であるSMAのフィリップ・ベル代表は「NAFTAでは企業が原産地規則の抜け穴を利用し、海外から部品をカナダやメキシコに送り、両国で組み立てることで自動車を無税で米国に輸出できる」(注)と現協定の問題点を指摘し、「USMCAの新たな原産地規則はこれらの抜け穴を封じ、米国の鉄鋼業界の競争力を強化する」と述べた。

一方、全米最大の労働団体である米国労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)のセレステ・ドレイク通商・グローバル化政策専門家は、「USMCAで労働規則や原産地規則などが変更されたが、米国内の雇用や労働者の賃金を改善する上で十分であるかは不透明」と述べ、USMCAに対する最終的な評価は保留すると述べた。

また、公聴会の冒頭では、次期第116連邦議会において下院歳入委員会の貿易小委員会委員長に就任すると目されるビル・パスクレル議員(民主党、ニュージャージー州)が、「USMCAでは幾つかの改善がみられるが、米国労働者にとって良い条件の基準を満たすかまだ判断できない」と述べ、「NAFTAにあるアウトソーシングを行う誘因を排除し、より意義のある方法で米国内の雇用と賃金を向上させなければ、どんな新協定も成功することはないだろう」と警鐘を鳴らした。また、USITCが作成するUSMCAの経済的影響に関する報告書は、USMCAの利点や欠点を判断する上で重要なものとなると述べ、USITCに対し、同協定がもたらす短期的および長期的な影響を考慮の上、包括的かつ有意義な報告書の提示を期待すると述べた。

(注)現NAFTAの原産地規則では鉄鋼製品がトレーシング対象品目に含まれていない。

(須貝智也)

(米国、メキシコ、カナダ)

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