USMCA公聴会、自動車団体は鉄鋼・アルミ関税の適用除外を要求

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2018年11月22日

米国際貿易委員会(USITC)は11月15~16日に、北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に関する公聴会を開催した。

自動車業界からは自動車政策会議(AAPC)、米国際自動車ディーラー協会(AIADA)、米国自動車工業会(AAM)、世界自動車メーカー協会(AGA)、米国自動車部品工業会(MEMA)などの主要団体が証言を行った。各団体は、NAFTAにより北米地域における緊密なサプライチェーンが構築され、北米地域全体が利益を享受し、成長を続けることができたと述べ、その後継となる新協定USMCAを基本的に支持する旨を表明した。

他方で、全ての団体が1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼とアルミニウム製品への追加関税賦課により、自動車業界がコスト負担を強いられていると訴え、USMCAにおいてカナダとメキシコが同措置の適用対象外とされなかった点を強く批判した。MEMAのアン・ウィルソン上級副代表(政府渉外担当)は、「鉄鋼・アルミニウム関税措置の発動以降、数十億ドルのコスト増につながっている」とし、「カナダとメキシコを鉄鋼・アルミニウムの関税賦課の対象外とすることは、USMCAをより強固なものとし、米国の製造基盤を強くする」と述べた。

厳格化された自動車・同部品の原産地規則(注1)については、複数の団体から自動車の種類や部品ごとに要件が細分化されていて複雑であり、対応するためにはサプライチェーンの点検の観点からも十分な移行期間が必要との声が上った。また、製造コストに加えて厳格な原産地規則に対応するための管理コストも上昇し、USMCAにより享受できる利益以上のコスト負担の発生を懸念する発言も聞かれた。新たな原産地規則について、AAPCのマット・ブラント会長は実用的(workable)と評価する一方、AGAのジョン・ボゼラCEOは「NAFTAよりも原産地規則の柔軟性が低下しており、国際競争上、米国の事業者が不利となる」と述べ、非実用的(unworkable)とし、米系と外資系団体間の立場の違いが浮き彫りとなった。

USMCAのサイドレターにおいて、232条に基づく自動車・同部品への追加関税が発動された場合、カナダとメキシコからの輸入に対しては一定量・額までは関税賦課の対象外(注2)と規定している点については、一定の評価をする声があった一方で、無関税枠を超えた場合の輸出に対する懸念も示された。

(注1)例えば、自動車(完成車)の場合、域内原産地比率(現行62.5%)の75%への引き上げ、時給16ドル以上の高賃金の労働者による生産比率(40~45%)、70%以上の北米産鉄鋼・アルミニウムの購入義務など。

(注2)USMCAのサイドレターにおいて、232条に基づく自動車・同部品への追加関税を発動する場合、メキシコとカナダからの輸入については、ライトトラックと年間260万台までの乗用車の関税賦課を対象外とすると約束している。自動車部品については、メキシコからの輸入は年間1,080億ドルまで、カナダからの輸入は324億ドルまでを対象外としている(2018年10月2日記事参照)。

(須貝智也)

(米国、メキシコ、カナダ)

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