野心的な将来関係目指すも、漁業やジブラルタル問題に新たな火種も

(英国、EU)

ロンドン発

2018年11月26日

EUが11月25日に承認した英国のEU離脱(ブレグジット)に関する離脱協定は、11月14日に英国の閣議が承認した合意案(2018年11月15日記事参照)を基に、移行期間の延長を「最長で1、2年」と記載するなどの微調整を経て確定した。他方の政治宣言は、同じく11月14日に閣議が承認した大枠(2018年11月16日記事参照)に基づいて交渉が続けられ、テレーザ・メイ首相と欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長との会談を経て、11月22日に合意。11月25日の欧州理事会(EU首脳会議)で離脱協定とともに承認された。26ページから成る同文書では、主に経済と安全保障に関する協力関係の方針が示された。

経済分野での協力関係のうち、モノの貿易については、英国政府が「白書」で求めた国境手続きのない通商関係(2018年10月16日記事参照)までは踏み込んでいないものの、全品目で関税、数量割当を回避するほか、信頼性が確認された貿易事業者(Trusted Trader)の相互承認や関税・諸税の還付など通関実務に関する相互協力を検討する、とした。また、白書で継続参加を求めていた医薬品(EMA)、化学(ECHA)、航空(EASA)などのEU機関については、英国機関との協力の可能性を模索する、としている。規制の連動性について、英国は関連分野におけるEU基準への準拠を検討するほか、公正な競争を実現するために補助金、独占禁止法、社会・雇用規制、環境基準、気候変動、租税などの分野を網羅する規定を設定する、としている。

現在の通商条件をできるだけ維持したい製造業や物流業にとって、これらは比較的好ましいものである一方で、与党・保守党のEU離脱強硬派らは広範な分野でEU規制に追随することを示唆する内容だとして反発している。

EU側では、英国を除く27カ国による協議の結果を文書で公表した。漁業を優先分野に特定し、移行期間終了より十分早い段階で新たな漁業協定に合意する必要がある、とした。また、最終段階でスペインが異論を唱えた英領ジブラルタルについて、EUは英国とEUの将来関係の取り決めの対象領土に含まれないとする見解を記述。英国政府は即座に同地域の主権を主張し、将来関係の交渉はジブラルタルを含む全領土を代表して行うとする書簡をEUに送っている。北アイルランドとアイルランドの国境問題に加えて、ジブラルタルも将来関係の交渉の火種となる可能性がある。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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