2019年国家予算法案が下院を通過

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年11月14日

アルゼンチン政府が9月17日に議会へ提出した2019年国家予算法案(2018年9月27日記事参照)は10月25日、16時間以上の審議を経て、賛成138票、反対103票で下院を通過した。

現政権は少数与党ではあるが、ペロン党(野党)穏健派に所属する州知事(サルタ州、サンフアン州、チャコ州、ラリオハ州、コルドバ州、エントレリオス州、ミシオネス州)の支持により、これら州の21の議員から賛成票が得られた。

他方、FPV党(勝利のための戦線、ペロン党左派)、左派戦線、FR党(刷新戦線)、FR党から分裂した「アルゼンチンのためのネットワーク」党などは、同予算計画が設定している経済指標の見通しが非現実的で、IMFが望む緊縮政策に従うものとして強く反発。国民負担の増加につながるとし、反対派の野党議員や社会活動団体は下院審議を延期させようと議会内で強い抗議を行った。

法案審議は既に上院に移り、一部の野党上院議員らの支持が確保されているため、早ければ11月14日には可決することが予想されている。法案の主要な点は以下のとおり。

  • 2018~2020年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を、それぞれGDP比マイナス2.7%、0%、プラス1%を目標とする。
  • 2018~2020年の実質GDP成長率見込みを、マイナス2.4%、マイナス0.5%、プラス2.8%とする。
  • 2018~2020年の対ドル為替レート見通しを、28.3ペソ、40.1ペソ、44.3ペソとする。
  • 2018~2020年の平均物価上昇率の見通しを、32.6%、34.8%、34.8%とする。
  • 公的債務については、2018年末時点で3,156億9,800万ペソ(約1兆102億円、1ペソ=約3.2円)、GDP比87%に達するが、2019年以降はその削減を見込む。
  • 2019年は社会保障負担額のほかに、付加価値税(IVA)、所得税、輸出税などによる徴税額が前年比38.9%増加する見通し。
  • 輸出税は2020年12月31日まで有効で、最高12%とする。大豆の最高税率は30%とし、引き上げは実施しない。
  • 交通機関への補助金撤廃を補う目的で、地方州のための補償基金を導入する。
  • 個人資産税の見直しを行う。

10月26日のIMF理事会において承認された、アルゼンチン向け追加融資では、IMFのコンディショナリティー(融資の際の制約条件)として緊縮財政の達成が要求されており、政府は2019年予算案に具体的に盛り込んだかたちだ。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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