欧州議会、離脱協定の審議は2019年初めとの見通し示す

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年11月16日

欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は11月15日、ブレグジット交渉妥結(2018年11月15日記事参照)を踏まえて、英国政府と合意した離脱協定草案を欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長に提示し、状況報告を行った。欧州議会は離脱協定に関する審議は2019年初めごろになるとの見通しを明らかにしている。

欧州議会のタヤーニ議長は同日、バルニエ首席交渉官、および欧州議会でブレグジット問題対策グループ座長を務めるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)と共同記者会見を開き、今回のブレグジット交渉妥結について「長い道程の第一歩」との認識を示したが、「英国はEUを離脱するが、欧州から出て行くわけではない」と語り、EU・英国の(通商協定を含む)将来関係については「楽観視している」とも述べた。ただし、「離脱協定」の内容については、「連帯と統合を旨とするEU加盟国の利益にも鑑みて、完全なEU加盟国よりも英国の立場は弱いものになるだろう」と付言した。

最大会派は慎重に離脱協定の審議に臨む構え

他方、欧州議会の最大会派である欧州人民党(EPP)グループも同日付で、英国政府との交渉妥結を歓迎する声明を発表したが、同グループ代表のマンフレート・ウェーバー議員(ドイツ選出)は、今後の数日で「離脱協定」の意義について慎重に見極める必要があると指摘した。また、同議員は(英国との国境管理問題に直面することになる)アイルランドのレオ・バラッカー首相が交渉妥結を前向きに評価していることを歓迎、「(EU側として)譲れない一線は守ることができた。交渉は成功だ」と総括し、バルニエ首席交渉官の手腕を評価した。ただ、今後の離脱協定をめぐる欧州議会の審議については「EU・英国の将来関係がどのような内容になるか次第」とし、内容を精査して同グループとして採決に臨む考えを示唆した。なお、ウェーバー議員は2019年の欧州議会選挙に向けて、EPPグループとしての次期欧州委員会の委員長候補に指名されている(11月8日)。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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