欧州産業界、ブレグジット交渉妥結を歓迎も慎重姿勢崩さず

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年11月16日

ブレグジット交渉の妥結(2018年11月15日記事参照)を受け、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)(2018年11月16日記事参照)をはじめ、欧州主要産業団体は相次いで歓迎の声明を発表した。ただし、英国内の政治情勢に対する懸念から、依然として「あらゆるシナリオを想定した対策(準備)」を堅持する産業団体もある。

欧州化学工業連盟(Cefic)は11月15日、「今回の離脱協定草案についての合意を歓迎する」と発表した。Ceficによれば、EU・英国の化学産業にとっての最大の成果は「欧州化学品庁(ECHA)を通じた欧州化学品規則(REACH)の枠組みに(英国が)残留する道が開かれたこと」にあるという。Ceficは英国化学工業協会(CIA)と共同で10月12日、英国が合意なき離脱(ノー・ディール)に踏み切った場合、REACHの枠組みから離脱せざるを得なくなる問題を指摘、欧州化学産業界にリスク対策を提言していた(2018年10月17日記事参照)。CIAのスティーブ・エリオット会長は「われわれは今後も、EU・英国の化学産業の断絶を最小限に抑えるための合意に向けて欧州議会、英国議会への働き掛けを続ける」と語っている。

欧州製薬団体連合会(EFPIA)は同日、ブレグジットに伴う社会的混乱から患者の安全と医療サービスを守ることを定めた政治宣言が妥結しない事態は「極めて憂慮される」と指摘。今回の「政治宣言」に盛り込まれた「税関協力、規制協力を前提とするEU・英国共通関税地域」の創設構想を評価する一方、EFPIAとしては今後も「欧州と英国の医薬品利用者の健康を守るため、あらゆるシナリオを想定した緊急対策を視野に入れる」と慎重な姿勢を崩していない。

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECA(2017年11月20日記事参照)も同日、今回の交渉妥結を「EU・英国の農業生産者にとって最悪の事態であるノー・ディールのリスクを極小化する」と評価したが、離脱協定の関連では、特にEUが現時点で認めている「地理的表示(GI)保護」についての(英国との)相互承認を重視しているとした。

この他、欧州酪農協会(EDA)も、アイルランド・ダブリンで年次総会を開き、「EU・英国の政治的指導者に迅速な離脱協定への署名、双方議会での承認を求める」声明を発表した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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