離脱協定と政治宣言の承認、英首相は意義を強調

(英国、EU)

ロンドン発

2018年11月26日

11月25日にブリュッセルで開催された欧州理事会(EU首脳会議)において英国のEU離脱(ブレグジット)に関する離脱協定と政治宣言を正式に承認された(2018年11月26日記事参照)。英国のテレーザ・メイ首相は首脳会議後の会見で、EUとの交渉で合意した内容は英国独自の移民政策を可能にし、EU拠出金を自国の裁量で活用でき、EU司法裁判所(CJEU)の管轄から離脱することを意味すると説明。首相はまた、合意が主権の回復を実現する一方で、英国がEUの単一市場、関税同盟から離脱しながらも、他のどの国よりも緊密なEUとの経済関係を実現するものだと強調した。

EU首脳会議に先立つ11月24日、メイ首相は英国民に宛てた書簡を公表。この中でも、合意内容が国益にかなうものだと強調し、2019年3月29日(英国時間午後11時)にEUから離脱することを明言した。さらに、首相官邸は25日の首脳会議終了後、「合意内容を支持する40の理由」と題する文書を公開。離脱協定や政治宣言に盛り込んだ取り決めや将来の方向性を列挙し、合意の有効性を訴えた。

メイ政権の積極的なアピールは、12月中旬にも採決が予定されている英国議会での支持獲得に対する危機感の裏返しでもある。政府の合意内容に激しく反発(2018年11月16日記事参照)している北アイルランドの民主統一党(DUP)は11月24日、ベルファストで党大会を開催。アーリーン・フォスター党首は演説で合意を重ねて批判し、より良い合意に向けて再交渉するよう求めた。来賓として招待された保守党EU離脱強硬派のボリス・ジョンソン前外相も、将来にわたってEUの規則に縛られ続けかねない「バックストップ」は破棄すべきだと訴えた。

一方、EU側は、英国の合意反対勢力を一貫して牽制している(2018年11月19日記事参照)。欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は首脳会議後の記者会見で、「この合意は英EU双方にとって実現し得る最良で唯一の合意だ。唯一の実現可能な合意だ」と繰り返し発言。BBCの取材でも「英国下院が合意を否決すれば、ノー・ディール(合意なき離脱)だ」と断言し、英国に判断を迫っている。

英国では、合意に反発する声が与野党ともに弱まっておらず、議会で承認を得るのはなお厳しい状況だ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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