EU離脱協定案めぐり与野党からさまざまな主張

(英国、EU)

ロンドン発

2018年11月19日

英国のEU離脱(ブレグジット)に関する離脱協定と政治宣言大枠が双方で合意されたこと(2018年11月15日記事参照)をめぐり、英国内では与野党からさまざまな主張が出た。

テレーザ・メイ首相は11月18日、民放スカイのニュース番組に出演し、「いま首相を替えても交渉が容易になるわけではなく、議会の構図も変わらない」とコメント、与党・保守党内のEU離脱強硬派らを牽制した。首相はまた、11月25日に開催される臨時欧州理事会(EU首脳会議)(2018年11月16日記事参照)の前にもブリュッセルを訪問し、政治宣言の詰めの協議のために欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長らと会談する予定があることを明らかにした。離脱強硬派が激しく反発する北アイルランドとアイルランドとの国境の「バックストップ」案(2018年11月15日記事参照)については、あくまでも一時的な措置であることを明言。この点については、ブランドン・ルイス保守党幹事長が11月15日に党員に宛てた書簡でも「EU条約第50条はバックストップを永続的解決手段としていない」と強調している。

保守党の離脱強硬派議員から成る欧州リサーチグループ(ERG)は11月18日、離脱協定案の問題点を指摘した文書を公表。グループが主張する代替案はEUとカナダの自由貿易協定(FTA)を発展させた「スーパー・カナダ」だとし、EUとの再交渉を訴えた。一方、野党・労働党のジェレミー・コービン党首はスカイのニュース番組で、政府の合意案は支持しないことをあらためて明言した上で、2度目の国民投票は「将来の選択肢ではあるが、現時点の選択肢ではない」と述べ、曖昧な姿勢は変えていない。スコットランド自治政府首相でスコットランド国民党(SNP)党首のニコラ・スタージョン氏も政府案を批判した上で、十分な再交渉の時間を確保するために、2019年3月29日の離脱日の延期を主張した。

閣内でも、アンドレア・レッドソム下院院内総務・枢密院議長ら複数の離脱派閣僚が、メイ首相に臨時欧州理事会の前に再交渉を求める動きを見せている。しかし各種報道によると、EU側ではドイツのアンゲラ・メルケル首相やオーストリアのセバスチャン・クルツ首相らが再交渉の可能性を否定。他方、ミシェル・バルニエEU首席交渉官は11月18日、英国以外のEU27カ国のEU大使との会談で、移行期間の延長は最長でも2022年末までとすることを提案している。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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