ブラジル次期政権にアルゼンチンは前向きな評価

(アルゼンチン、ブラジル、南米南部共同市場<メルコスール>)

ブエノスアイレス発

2018年11月16日

ブラジル大統領選挙(10月28日)でジャイール・ボルソナーロ候補が当選した(2018年10月29日記事参照)ことをめぐり、アルゼンチンでは、今後の南米南部共同市場(メルコスール)の動向が注目されている。10月30日付の「クロニスタ」紙などは、政府の経済・外交筋はブラジルの労働者党からの転換を好意的に捉えている、と報じている。

次期政権の財務相候補に指名されているパウロ・ゲデス氏は「メルコスールもアルゼンチンも、(ブラジルの)優先事項ではない」と、アルゼンチン記者からの問いに切り返した(その後、同氏は両国・地域を軽んずる発言ではなかったと謝罪)。ボルソナーロ次期大統領の経済顧問である同氏は、チリが推進している開放的な経済政策モデルを賞賛し、次期大統領の最初の外遊先としては、恒例のアルゼンチンではなく、チリを予定していると述べた。

ゲデス氏の発言を受けて、アルゼンチン国内では今後の両国間の関係や貿易政策の行方、そして経済にもたらす影響に関する議論が盛り上がっている。アルゼンチンのエコノミストらは、ボルソナーロ次期大統領が掲げる、ブラジル経済の再建に注力されることで、同国の内需の拡大や投資の増加が見込め、アルゼンチンにとってプラスとなるとの意見で一致する。ダンテ・シカ工業生産・労働相や多くのエコノミストは、ブラジルが1%経済成長すれば、アルゼンチンはその影響を受けて0.25%成長できるとしている。特に、自動車産業、化学産業、金属加工業への好影響が期待できる。

貿易面では今後、ブラジルが共同市場理事会(CMC)決議32/00号(注)に縛られることなく、2国間の通商交渉を目指すとみられる。アルゼンチン政府は、ブラジルの動きを注視しつつ、他方でメルコスールという枠組み自体の存続の必要性を認めている。今後とも、最大の貿易相手国であるブラジルを戦略的パートナーとして関係を維持させたいとみられる。

(注)第三国または域外ブロックとの通商交渉は、単独ではなく、メルコスール加盟国全体として行わなければならないという取り決め。

(山木シルビア)

(アルゼンチン、ブラジル、南米南部共同市場<メルコスール>)

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