EU理事会、対シンガポール貿易・投資協定の署名を承認

(EU、シンガポール)

ブリュッセル発

2018年10月16日

EU理事会は10月15日、EU・シンガポール自由貿易協定(FTA)およびEU・シンガポール投資保護協定についての署名に関する決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択した。EU・シンガポールの両政府は10月19日、アジア欧州会合(ASEM)の機会を捉えて、ブリュッセルで両協定に署名する予定だ。

EUとASEAN加盟国との初めてのFTA

EU・シンガポールFTAは2010年に投資保護条項を含めて交渉が開始され、2014年に妥結したが、2017年5月16日のEU司法裁判所(CJEU)の意見書(2017年5月17日記事参照)を踏まえて、欧州委員会は2018年4月18日に「自由貿易協定」と「投資保護協定」に分け別個に締結する案を提示していた。

同FTAは、EUがASEAN加盟国と妥結した初めての通商協定として注目されるが、現実にはEU・ASEANの財・サービス貿易の約3分の1を対シンガポール貿易が占めているという。2017年の財の貿易をみると、EUの(対シンガポール)輸出は331億6,000万ユーロ、EUのシンガポールからの輸入は201億4,000万ユーロに達する。ただ、EU側の発表によると、EUからシンガポールへ輸出される財に課される関税は同FTAがない現状でもわずかであり、むしろ、「知的財産権保護」「投資自由化」「公共調達」「競争」「持続可能な開発」などの条項に重要性があるという。また、シンガポールと12のEU加盟国との間には2国間の投資協定が締結されているが、EU・シンガポール投資保護協定が発効すれば、これらに置き換わるという。

欧州委員会のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は「シンガポールはアジア大洋州における重要なゲートウエーであり、これらの協定により、EUの企業・投資家・農業生産者へ新たな機会を創出する」とEU理事会の決定を評価した。

なお、欧州委によれば、両協定は10月19日の署名に続いて、欧州議会での採決に付される予定で、ここで承認されれば、EU・シンガポールFTAについては2019年内、現在の欧州委員会の任期中に発効する見通しとしている。他方、EU・シンガポール投資保護協定については、(上記CJEU意見書の判断を踏まえ)EU全加盟国での批准手続きを経て発効するとの見通しを明らかにした。

(前田篤穂)

(EU、シンガポール)

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