通貨金融庁、4月に続き一段と金融引き締め

(シンガポール)

シンガポール発

2018年10月16日

通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は10月12日、シンガポール・ドル(Sドル)の名目為替実行レート(NEER)の誘導目標帯(許容変動幅)の傾斜幅を若干引き上げ、Sドル高に誘導する金融引き締め策を引き続き実行すると発表した。なお、NEERの誘導目標帯の幅と中央値に変更はないとしている。

MASは今回の金融の再引き締め策の理由として、「2018年末、また2019年も国内経済の成長幅は縮小するものの、堅調な成長が見込まれる」と述べた。同庁は金融政策の手段として政策金利を設定せず、4月と10月の年2回、Sドルの為替変動幅を見直している(注)。MASは2018年4月13日に、それまでの金融緩和から引き締めへと政策を転換していた(2018年4月17日記事参照)。MASは、今回の追加金融引き締め策により「中期的に物価の安定が見込める」としている。

コア・インフレ率は上昇傾向へ

MASによると、住宅関連費と民間輸送費を除いたコア・インフレ率は2018年7~8月に前年同期比で平均1.9%と、同年上半期の1.5%から上昇した。これは、原油関連製品に加え、食品、小売品の価格上昇によるもの。MASは今後、雇用市場の改善により、2018年と2019年の給与の伸び幅が2017年を上回る見通しだと指摘。輸入と労働コスト上昇が消費財価格を押し上げる可能性があるものの、通信や電力、小売りなど一部分野では市場競争の激化により物価上昇が抑制されるとしている。

MASは2018年末までに、コア・インフレ率が2%程度まで上昇すると予想している。また、2018年通年のコア・インフレ率については予測レンジである「前年比1.5~2.0%」で推移し、2019年は「1.5~2.5%」と見込んでいる。また、総合消費者物価指数(CPI)については、2018年に前年比「約0.5%」、2019年は「1.0~2.0%」上昇するとの予測を示した。

(注)MASはSドルの為替レートの設定に当たり、米国を含む主要貿易相手国の通貨で構成する通貨バスケット制を採用しているが、具体的な構成通貨や変動幅は公表していない。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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