外国投資審査現代化法の一部条項を先行実施

(米国)

ニューヨーク発

2018年10月16日

米財務省は10月10日、「2018年外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」(注1)の一部条項を先行実施するパイロットプログラムを発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。8月13日に成立したFIRRMAは、外国企業の対米投資を審査する外国投資委員会(CFIUS)の機能を強化する法律で、同法による主な制度変更が適用されるのは、財務省が実施に伴う規制整備などの準備ができたと官報で公示した日から30日、または法律施行日から18カ月後(2020年2月13日)のどちらか早い方に設定されている。今回発表された内容は11月10日から適用されるが、10月11日より前に完了しているか、同日までに拘束力を伴う契約が交わされている取引は対象外となる。

パイロットプログラムは、北米産業分類(NAICS)に基づく27の特定産業(添付資料参照)に関係する重要技術(注2)を扱う米国企業への外国企業による投資が対象になる。財務省によれば、これらの産業分野は、戦略的意図に基づいた外国投資により米国の技術的優位や安全保障が脅かされる分野として選ばれた。

今回のパイロットプログラムにおける変更は以下の2点。なお、追加投資による権利変更により、以下の条件を満たす場合も対象になる。

  1. 特定産業に関係する重要技術を扱う米国企業への投資については、米国企業に対する支配を伴わない外国投資についても、CFIUSの審査対象に含める。
  2. 特定産業に関係する重要技術を扱う米国企業への投資について、宣誓制度(注3)の利用を義務付ける。ただし、CFIUSの正式な審査を申請する場合は宣誓制度の利用は不要。

1.については、(1)米国企業が所有する非公開の技術情報に外国企業がアクセスできるようになる場合、(2)外国企業が米国企業の取締役会などに参加(オブザーバーも含む)できるようになる、または取締役会などへの参加者を外国企業が指名できるようになる場合、(3)議決権の取得以外の方法であっても、米国企業の重要技術の使用・開発・取得・譲渡に関する重要な判断に外国企業が関与する場合、が対象になる。

2.については、取引完了日が11月10日~12月25日の間になる場合は、11月10日またはその後迅速に宣誓書を提出する必要がある。また、取引が12月25日より後に完了となる場合は、その45日前までに宣誓書の提出が求められる。CFIUSは宣誓書受理後30日以内に取引を認可するか、正式な審査の申請要請を出すかなどを判断する。なお、パイロットプログラムの対象になる投資に関して宣誓書の提出を怠った場合は、最大で取引額と同額の罰金が科される可能性がある。

(注1)FIRRMAの内容については2018年9月3日付の地域・分析レポートを参照。

(注2)2018年輸出規制改革法により規制される新興・基盤的技術(emerging and foundational technologies)も対象。

(注3)宣誓制度は、投資の概要を記した5ページ以内の「宣誓書(Declaration)」を提出することで、正式な審査を受ける必要があるか事前にCFIUSに判断を求める制度。

(鈴木敦)

(米国)

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