為替政策報告書、最近の人民元安に懸念を表明

(米国)

ニューヨーク発

2018年10月19日

米財務省は10月17日、2018年下半期の「米国の主要貿易相手のマクロ経済と為替政策(Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States)」(為替政策報告書)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。それによると、2018年前半以降に為替操作を行っていたと認定される国(為替操作国)は、前回の報告書(2018年4月公表)と同様になかったという(2018年4月18日記事参照)。

為替操作国の認定を行うに当たっては、(1)大幅な対米貿易黒字(対米貿易黒字額が年間200億ドル以上)、(2)実質的な経常収支黒字(経常収支黒字額がGDP比3%以上)、(3)持続的で一方的な為替介入(過去12カ月間の介入総額がGDP比2%以上)の3つの基準が検討される。今回の報告書では、前回と同様に3つの基準を全て満たした国はなかったが、前回も取り上げられた中国、日本、韓国、インド、ドイツ、スイスの6カ国が引き続き監視リストに挙げられた。

中国については、前回と同様に(1)のみを満たしていたが、対米貿易赤字において巨大かつ不均衡な割合を占めると米国が判断したことから、引き続き監視対象とされた。報告書では他の5カ国とは異なる段落を設け、「為替介入に関する情報開示を避け続けていることに深く失望」しており、介入による人民元の大幅な過小評価が「米国の労働者と企業に長きにわたって重大な苦難を課してきた」と指摘した。また、ここ数カ月の「人民元安(の動き)を懸念しており、中国人民銀行との協議も含め、次の半年間にわたって今回の決定を慎重に監視し、審査する」とした。

日本、韓国、ドイツは(1)と(2)、スイスは(2)と(3)と、引き続き2つの基準をそれぞれ満たしていたことから、前回と同様に監視対象とされた。報告書では、日本について「2011年以降、為替介入を行っていない」ものの、引き続き「米国と日本の間に大きな貿易不均衡が存在することを懸念している」とした。

インドについては、今回(1)のみを満たしていたが、前回報告書では(1)と(3)を満たしていたことから、引き続き監視対象となった(注)。

(注)監視リストに一度挙げられた国は、少なくとも向こう2回分(1年分)の報告書において対象国として取り上げられ、3つの基準にみられる改善が一時的なものでなく、永続的なものになっているかどうかについて評価される。

(権田直)

(米国)

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