新大統領にサレハ氏、首相候補を直ちに指名

(イラク)

ドバイ発

2018年10月05日

イラク国民議会は10月2日、新大統領にクルド人のバルハム・サレハ氏を選出、同氏は直ちにシーア派のアデル・アブドルマハディ元石油相・副大統領・金融相を首相候補に指名した。総選挙から5カ月を経て新政権が発足する見通しとなった。

次期政権発足に向けた次のステップは、アブドルマハディ首相候補による30日以内の組閣案の議会提出となる。組閣案は議員の過半数の賛成によって承認され、最短で11月中にも次期政権が発足する見通しとなった。承認された場合、イラク戦争後の暫定政権を除きダアワ党以外から初の首相となる。否決された場合は首相候補の指名からやり直しとなり、年内の政権発足は厳しい状況となる。

サレハ新大統領はクルディスタン地域(KRG)政府の前首相で、クルディスタン愛国同盟(PUK)所属。大統領ポストは慣例としてクルド人に充てられているが、国民議会発足以来同ポストを維持しているPUKと、KRG政府与党のクルディスタン民主党(KDP)との間で調整が難航し、直前まで不透明な状況が続いていた。

アブドルマハディ首相候補は、フランスのポワティエ大学の政治経済学博士号を持つエコノミストで、イラク・イスラム最高評議会に席を置いた76歳のベテラン政治家。シーア派の政治勢力はハイダル・アバディ首相を中心としたグループ、ハディ・アミリ人民解放軍司令官とヌーリ・マリキ前首相を中心としたグループに二分されているが、アブドルマハディ氏はどちらにも属していなかった。新大統領に即座に首相候補が指名された背景には、混乱の長期化を避ける狙いがあったようだ。

総選挙後の経緯は次のとおり。

  • 2018年5月12日:第4回イラク国民議会選挙。ムクタダ・サドル師率いる「変革への行進(サーイルーン)」が第1会派、アミリ司令官「征服連合(ファス/ファタハ)」が第2会派、アバディ首相「勝利連合(ナスル)」が第3会派に(2018年5月24日記事参照)。
  • 8月19日:選挙結果をめぐる混乱の末、最高裁判所が選挙結果を承認。
  • 9月3日:国民議会が招集されるも議長選出は繰り延べに(2018年9月10日記事参照)。
  • 9月15日:ムハンマド・ハルブシ前アンバール県知事が議長に選出。ファタハに合流したスンニ派で37歳、歴代最年少の議長。筆頭副議長にサーイルーンからシーア派ハサン・カアビ氏、第2副議長にKDPのバシル・ハダッド氏。

(田辺直紀、オマール・アル=シャメリ)

(イラク)

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