上半期はインフラ投資が大幅鈍化、債務過剰リスク防止策が背景に

(中国)

北京発

2018年08月09日

国家統計局が7月13日に発表した2018年上半期の主要経済指標をみると、投資の伸びは前年通年より縮小、消費もわずかに縮小した。地方政府の債務過剰リスクの防止策などに伴うインフラ投資の鈍化が目立った。

固定資産投資総額(農家を除く)は前年同期比6.0%増となり、伸び幅は2017年通年から1.0ポイント縮小した。うちインフラ投資は、伸び幅が11.7ポイント縮小し、7.3%増となった。一方、民間投資は伸び幅が2.4ポイント拡大し8.4%増と持ち直した。

製造業投資は業種により明暗

投資を業種別にみると、教育(11.2%増)、文化・体育・娯楽業(17.5%増)などサービスや消費の向上に関連する分野の伸びが高かった。製造業は全体では6.8%増となったものの、さらに細かい分類では業種間の差が目立った。専用設備製造業(10.3%増)、コンピュータ・通信・その他の電子設備製造業(19.7%増)などハイテク分野の伸び率は高かった一方、化学原料・化学製品製造業(2.7%減)、有色金属製錬・圧延加工業(4.8%減)など環境規制の影響を大きく受ける業種はマイナスとなった。

また、インフラ投資に関連する業種では、電力・熱・ガスおよび水道業(10.3%減)、鉄道運輸業(10.3%減)などの減少が目立った。政府系シンクタンクの国務院発展研究中心産業経済研究部第4研究室の許召元主任は、インフラ投資の伸びの鈍化は中央政府が地方政府の債務リスク防止に力を入れている結果だとし、下半期のインフラ投資の伸びは鈍化幅こそ限定的だが、より鈍化する可能性があると指摘した(「21世紀経済報道」7月26日)。

地方政府の債務過剰リスクの防止と、それに伴うインフラ投資の鈍化が経済の下押し圧力となる中、国務院常務会議は7月23日、地方政府特別債券の発行〔1兆3,500億元(21兆6,000億円、1元=約16円)〕を加速させ、建設中のインフラプロジェクトがもたらす経済効果の早期発揮を促す必要があるとの方針を示した。なお、同会議は政府による大規模な「ばらまき型」景気刺激策を行わない方針も示している。政府は景気の下支えと金融安定化のバランスを保ちつつ改革を進めるという難しいかじ取りを迫られそうだ。

(藤原智生)

(中国)

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