欧州委、民意を踏まえて「夏時間」制度廃止を提案

(EU)

ブリュッセル発

2018年09月13日

欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は9月12日、ストラスブールで行った一般教書演説(2018年9月13日記事参照)の中で、これまでEU加盟国が採用してきた夏時間制度(注)を廃止する提案を欧州議会と欧州理事会に対して行った。欧州委の発表によれば、現行制度に基づく、夏時間への最後の調整は2019年3月31日(日曜日)に実施(ここまではEU加盟国一律)され、その次の時間調整の機会となる2019年10月27日(日曜日)に冬時間に戻すか否かは各加盟国の判断に任せる方針だが、それ以降の時間調整は認められなくなる。

EU全体の8割超が夏時間制度の「廃止」を支持

欧州委は、2019年10月27日以降の各加盟国の標準時間の設定について、2019年4月中にその方針を通知するように加盟国に求めている。2019年10月27日以降、各国が夏時間または冬時間のいずれを標準時間とするかを明らかとすることで、運用上の混乱を回避する狙いがある。

欧州委が夏時間制度の廃止を提案した背景には、EU28カ国を対象に行ってきたパブリック・コンサルテーション(公開諮問)の結果、全体の84%が廃止を希望したことがある。欧州委の8月31日の発表によると、2018年7月4日から8月16日にかけてインターネットを通じて実施した公開諮問には約460万の回答が寄せられた。このうち、特にフィンランド(95%)、ポーランド(95%)、スペイン(93%)、リトアニア(91%)などで「廃止」を求める声が目立った。このほかでも、廃止支持が8割を超える加盟国が多く、夏時間制度の「維持」が過半数を占めたのはギリシャ(56%)とキプロス(53%)の2カ国にとどまった。

(注)「夏時間」制度:EUでは現在、全加盟国に「3月の最終日曜日」に標準時間(冬時間)を1時間進めて夏時間(サマータイム)に改め、「10月の最終日曜日」に標準時間に戻すことを義務付けている。

(前田篤穂)

(EU)

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