天然ガス大手2社の業績、上半期は増収増益と好調

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年09月13日

天然ガス大手2社が発表した2018年上半期の財務諸表(国際会計基準)は、いずれも増収増益と好調な業績となった。

最大手ガスプロムの売上高は前年同期比23.7%増の3兆9,715億5,500万ルーブル(約6兆3,545億円、1ルーブル=約1.6円)、純利益(注)は65.4%増の6,308億400万ルーブル。特に、第2四半期における天然ガスの国際価格上昇や欧州向け輸出増が好決算につながった。ちなみに、第2四半期の売上高は前年同期比31.4%増の1兆8,332億2,400万ルーブル、純利益は5倍超の2,591億8,100万ルーブル。

第2四半期の純利益のうち376億ルーブルは特別収入で、関係者によると、天然ガス価格の割引率で係争中だったトルコ国営石油ガス・パイプライン輸送公社(BOTAS)と6月に和解の結果、遡及(そきゅう)して収入があったものとされる。

なお同社は9月5日、2018年の投資プログラムを改定。ガス輸送や液化天然ガス(LNG)の優先事業のため投資額を過去最大規模の1兆4,960億ルーブルに拡大する方針で、今後取締役会での承認を経て実行される。

独立系大手ノワテクの2018年上半期は、売上高が前年同期比32.4%増の3,752億2,500万ルーブル、純利益が1.2%増の751億6,200万ルーブル。第2四半期は為替差損益の影響で、純利益が第1四半期の減益から増益に転じた。上半期の増収には、同社が5割出資する「ヤマルLNG」の第1期生産開始が寄与した。

ヤマルLNGにはノワテク以外に、フランスや中国の企業・組織が出資し、2017年12月に北極圏で世界初のLNG生産を開始した。2018年6月下旬から7月中旬にかけて砕氷型LNGタンカーが北極海経由で中国まで航行し、砕氷船の先導を伴わない東航ルートの単独航行が初めて実現した。ノワテクは東回り航路でのヤマルLNGからのアジア太平洋向け輸送量を拡大するため、極東カムチャツカ地方において年間2,000万トン規模の積み替え基地の建設を計画中。ロシア政府も同計画を支援している(2018年8月15日記事参照)。

同社のレオニド・ミヘリソン社長は8月20日、西回り航路の輸送強化のため、ムルマンスク州北部のウラ湾にLNG積み替え基地を建設する意向も明らかにした。ムルマンスク州は、高緯度にありながらも暖流の影響で凍結しないため、世界最北の不凍港の1つとされる。同社長は「不凍港での通常タンカーへの積み替えにより、輸送効率の向上が可能になる」として、ヤマルLNGからの輸出拡大に期待を示す。積み替え能力はカムチャツカ基地と同じく年間2,000万トンを見込む。

(注)親会社株主に帰属する純利益のみを指す。

(市谷恵子)

(ロシア)

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