欧州委、牛肉輸入めぐる米国との摩擦回避に動く

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年09月04日

欧州委員会は9月3日、肥育ホルモン剤を投与していない米国産牛肉のEUへの輸入に関する無関税割当枠(クオータ)を見直すため、米国との交渉権限を付与するようEU理事会(閣僚理事会)に勧告すると発表した。EUと米国の間ではホルモン剤を投与した牛肉の貿易をめぐり、WTOで紛争が続いており、欧州委は「この積年の課題の解決を目指す」としている。

対米通商摩擦の解消に腐心

欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長は7月25日に米国のドナルド・トランプ大統領と会談し、通商摩擦から協調路線に転換、通商関係強化を目指すことで合意している(2018年7月26日記事参照)。この一環として、欧州委としては、成長を促進させる肥育ホルモン剤を投与していない高品位の米国産牛肉の輸入については、現行の割当枠を見直す構えだ。欧州委はEU理事会に対する勧告の中で、現在、第三国にも認めている割当枠の一部を、WTOルールにも配慮した上で、米国に割り当てる考えを示唆している。

欧州委のフィル・ホーガン委員(農業・農村開発担当)は今回の対応について、「大西洋を跨いだ通商摩擦緩和に貢献する」狙いがあることを明らかにしているが、「牛肉割当枠の総量は現行の量と変わらない」ことを強調、EU側の牛肉生産者の懸念払拭(ふっしょく)にも配慮した。また、EU域内の消費者に対しては、今回の対応はあくまで「肥育ホルモン剤を投与していない牛肉輸入に限定されたもの」であり、EUの食品安全基準(肥育ホルモン剤を投与した牛肉輸入の禁止)には変わりがないことも確認した。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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