新空港の建設継続求める意見相次ぐ

(メキシコ)

メキシコ発

2018年09月12日

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)次期大統領の新政権移行チームが8月17日に発表したメキシコ市国際空港の飽和解消のための技術的意見書(2018年8月23日記事参照)を受け、国内の複数の団体が相次いで新空港の建設継続を求める意見書を発表している。

民間非営利団体のメキシコ競争力研究所(IMCO)は9月4日、新空港の建設継続の必要性を強調する内容の報告書を発表した。近年の空港利用者数の想定以上の増加による計画変更と通貨ペソの為替レートの下落により、ペソ建ての新空港建設コストは当初計画から7割増加しているものの、新空港の社会的収益性は高く、空港使用料収入を見込んだ民間投資ファンドなどの活用により、投資資金に占める国庫負担は10%程度にすぎないことを強調している。反対に新空港建設を中止した場合のコストは1,200億ペソ(約6,900億円、1ペソ=約5.8円)に達し、建物部分を除いた新空港建設投資額の42%を占めると問題視する。

9月5日には、メキシコ土木エンジニア協会(CICM)、メキシコ・エンジニアリング学会(AIM)、メキシコ・エンジニア協会連盟(UMAI)の3団体がハビエル・ヒメネス・エスピリウ次期通信運輸相に意見書を提出した。同意見書は現空港の飽和解消のためには新空港の建設継続が現実的かつ実現可能で信頼のおける解決策であり、現空港の継続利用とサンタルシア空軍基地の拡張という案は魅力に乏しく、危険だという内容だ(メキシコ主要各紙9月6日)。

ヒメネス・エスプリウ次期通信運輸相によると、IMCOやエンジニアリング3団体以外にも、企業家調整評議会(CCE)や国際民間航空機関(ICAO)などから意見が提出され、全ての意見書がAMLO氏の公式ウェブサイト上で公開されている。なお、世論調査機関ミトフスキーが7月に実施した調査では、国民の54.4%が新空港の建設は継続すべきだと考えており、8月に「エル・フィナンシエロ」紙が実施した調査でも52%が新空港の建設継続を支持している。

ちなみに、国際空港評議会(ACI)によると、メキシコ市国際空港の2016年の航空機発着回数は44万8,181回で中南米最多、世界でも19位と成田空港(20位)を上回る。本来の発着能力は36万5,000回であるため、能力を約23%も上回るオペレーションとなっており、発着の遅れによる利用者の不便や航空安全上の危険性を指摘する声が強い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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