イケア、10~12月に1店舗で完全キャッシュレス化実験

(スウェーデン)

ロンドン発

2018年09月10日

スウェーデンの家具販売大手イケアは8月30日、中部イェブレ市郊外のバルボー店で、10月1日から12月31日まで、完全キャッシュレス営業の実証実験を行うと発表した。実験の背景にはスウェーデンでキャッシュレス化が進み、実証実験を行う土壌が整ったことがある(2018年5月24日記事参照)。スウェーデン国立銀行(中央銀行)が実施したアンケート調査によると、過去1カ月間で支払いに現金を使用した人の割合は、2014年の87%から、2018年には61%へ低下している。

イケアのカスタマーエクスペリエンス(CX)マネジャーであるペーテル・ニルソン氏は、ビジネス誌「VA」(8月30日)で、「顧客の行動と期待は常に変化している。われわれは彼らの期待を超えるかたちで応えたいと考えており、柔軟な支払い方法の提供もその一環だ」と語っている。バルボー店のパトリック・ブールステインCXマネジャーは、既に多くの顧客が現金以外の支払い方法を選択していると述べ、現金管理作業が減少する分、スタッフは顧客への対応に時間を費やせるとしている。さらに、店舗内に現金を置かないことにより、強盗などのリスクが減少することを期待している、と述べている。

イケアは世界29カ国で355店舗の直営店を展開(2017年8月末現在)しているが、同社にとって完全キャッシュレス化はバルボー店が初めてだ。VAによれば、国内ではオーレンスデパートが、8月20日から60店舗のうちの3店舗でキャッシュレス化を実験中で、同様の取り組みを行う企業は今後増えていくとみられる。しかし、キャッスレス化に対しては、技術革新に対応できない高齢者などが取り残される可能性などの問題点も指摘されている。セキュリティー産業団体とキャッシュを残す活動をしている団体の広報担当を兼ねているビョルン・エリクソン氏は、「DN」紙(8月22日)の経済欄でオーレンスデパートの実験に対し、「一部の企業が、消費者の意向をくまず、現金支払いの選択肢を奪い去るトレンドは遺憾だ」と、批判している。

(篠崎美佐、岩井晴美)

(スウェーデン)

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