政府が新たな金融・経済政策、米国の制裁再開に対応

(イラン)

テヘラン発

2018年08月28日

トランプ米大統領が対イラン制裁を5月8日に発表し、さらに8月7日から一部制裁が再発動(2018年8月9日記事参照)されたことを受けて、イランの国内経済にも徐々にその影響が出始めている。

イラン中央銀行の発表によると、2018年6月の消費者物価指数は前年より18.0%上昇し、品目によっては大幅な上昇も見受けられる。例えば、たばこは72.4%増、果物やナッツ類は54.7%増、魚介類は24.0%、乳製品・卵は20.2%増となった。一部の小売店では、輸入品のみならず国産品の品薄状況や、また商品の売り惜しみも出始めているという。外国為替相場では現地通貨イラン・リアルの大幅安が進行し、輸入に加えて物価上昇に大きな影響を与えている。

こうした状況に対して、政府も対抗措置を講じた。8月6日に、イラン中銀のアブドゥルナセル・ヘマティ総裁は新しい金融政策として、これまで禁止していた両替商での両替業務の再開、輸入に際して新たに定めたシステム「NIMAシステム」を通じたレートに基づき、外貨を割り当てることなどを発表した。

また、産業鉱山貿易省は8月15日、外国公館関係者を集めて、輸出入に関する外貨割当および禁輸品目に関する説明会を行った。2018年6月に1,339の禁輸品目が同省から発表されたが、詳細が不透明だったことから混乱が生じていた(2018年6月29日記事参照)。

同省の説明によると、イランへの輸入品目を4つに分類し、以下のとおり外貨を割り当てることになる。

  • 第1分類(食品、農業製品、医薬品、医療機器などの必需品):公定レート(1ドル=4万2,000リアル)で外貨が割り当てられる。
  • 第2分類(原材料、中間財、機械類など)および第3分類(消費財および工業製品など):NIMAシステムを通じた外貨を売却する輸出者と外貨を必要とする輸入者による交渉により、外貨割り当てレートが決定。
  • 第4分類(1339の禁輸品目、イラン国内において生産能力を有する品目):品目リストは現在ペルシャ語のみの発表。

上記分類は3カ月ごとの見直しを予定しており、禁輸措置もイラン暦当年中(2019年3月20日まで)には終了する見通しとも説明している。こうした政府の新政策が機能し、厳しくなりつつある経済状況を打開できるか、注視する必要がある。

(中村志信)

(イラン)

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