次期大統領、エネルギー分野の優先4プロジェクトを発表

(メキシコ)

メキシコ発

2018年08月01日

メキシコ次期大統領のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)氏は7月27日、次期政権のエネルギー分野の4つの優先プロジェクトを発表した。2019年に1,750億ペソ(約1兆500億円、1ペソ=約6円)を投じ、低迷しているエネルギー分野を復興させるとしている。

発表された4つの優先プロジェクトは以下のとおり。

  1. 石油生産を急回復させるための探査・掘削活動の強化
  2. 既存の6カ所の製油所の近代化およびリハビリ
  3. 新製油所の建設
  4. 電力発電量の拡大

1.については、石油公社PEMEXが所有する油田の生産減退により過去14年間で原油生産が日量150万バレルも減少したことに触れ、今後2年間で生産を日量60万バレル拡大し、250万バレルまで回復させることを目指す。2019年は、そのための探査・掘削活動の強化に750億ペソを投じる。

2.については、既存の6カ所の製油所の稼働率が平均30%程度にとどまっており、ガソリンの75%を輸入している事態を憂慮し、今後2年間で490億ペソを投じて既存製油所の稼働率を100%に近づける。4.については、電力庁(CFE)の発電能力を強化するプロジェクトで、主に水力発電に注力する。既にある貯水池やダムのインフラをフル活用し、水力発電設備を近代化することで発電量を増やす。

3.は、AMLO氏の公約の中でも選挙期間中から議論を呼んでいたプロジェクトだ(2018年6月22日付地域・分析レポート参照)。タバスコ州パライソ市のドスボカス港に新製油所を建設する計画で、2019年から開始するとしている。投資額は3年間で1,600億ペソ(約86億ドル)を見込んでいる。

巨額の投資額を捻出できるのかが課題

AMLO氏は、2005~2008年に建設されたインドのジャームナガル製油所の事例から、建設費用60億ドル、建設期間3年という数字を選挙期間中から主張していたが、今回の計画では約86億ドルと投資額が少し増えている。AMLO氏は、新製油所の建設と6カ所の既存製油所の近代化により、ガソリン輸入を3年後にゼロにすると主張しているが、建設に必要な投資額をどのように調達するのか、国庫の歳出予算から支出するのであれば、人件費などの経常的経費の削減だけで財源を確保できるのか、実現性には疑問を呈する声も多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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