公聴会では各国政府からも批判の声、報復措置も視野

(米国)

ニューヨーク発

2018年07月27日

自動車と同部品に関する1962年通商拡大法232条(以下、232条)の公聴会(7月19日)では、日本を含む外国政府の代表者も証言し、貿易制限措置の発動を見合わせるよう主張した(注)。

在米日本大使館の相川一俊公使は、日系自動車メーカーの米国経済への貢献を強調した上で、追加関税は米国経済や米国の自動車産業に深刻な影響を及ぼし、米国人の雇用を危険にさらすと訴えた。併せて、日本からの輸入は米国の安全保障の脅威にはならないと述べた。また、日系自動車メーカーは150万人以上の米国内雇用を創出していることに加え、地域の教育機関などと連携して職業訓練の場を提供するなど、人材育成の面でも貢献していると強調した。そのほか、日本関連の証言者では、日本自動車工業会(JAMA)が、日系自動車メーカーが30年以上にわたり米国への投資を拡大し、米国に製造開発拠点を置き米国の産業イノベーションにも貢献していると述べた。住友ゴム工業、ジェイテクトは米国での現地生産を軸としていることや、サプライチェーンの変更は難しいことを強調した。

EUのデビッド・オサリバン駐米大使は「主要同盟国からの輸入が米国の安全保障を脅かすという考えはばかげている」と232条調査を批判し、追加関税は米国経済に悪影響を与え、他国からの報復関税を招くと警鐘を鳴らした。

メキシコ、カナダ両政府は、米国と自国の間を何度も往復して自動車が製造されているとして北米での一体化したサプライチェーンの存在を指摘し、互いの経済発展がそれぞれにとって利益になると強調した。メキシコのヘロニモ・グティエレス駐米大使は、本調査は232条の制度を悪用したものだと批判した。さらに、北米自由貿易協定(NAFTA)交渉などにおける武器として232条を利用すべきではないと牽制し、発動すれば報復措置を取ると示唆した。カナダのカーステン・ヒルマン駐米副大使も、カナダで製造され米国に輸出される自動車は、米国産部品が価格の50%以上を占めており、米国経済に大きく貢献していると強調した上で、追加関税が賦課された場合は報復措置も辞さない姿勢をみせた。

韓国政府は自動車分野の合意内容の見直しを行った米韓自由貿易協定(KORUS)について言及し、追加関税の発動はKORUS見直し交渉の成果を損なうと牽制した。また、現代自動車からはアラバマ工場の従業員が出席し、関税賦課は自身のような従業員の雇用を危険にさらすと訴えた。

(注)公聴会における自動車業界団体の証言については、2018年7月26日記事参照

(須貝智也)

(米国)

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