公聴会で自動車業界、追加関税に圧倒的多数の反対意見

(米国)

ニューヨーク発

2018年07月26日

米商務省は7月19日、1962年通商拡大法232条に基づく自動車と同部品の輸入安全保障調査を議題として公聴会を開催した(注)。ウィルバー・ロス商務長官は開会あいさつで、安全保障への脅威との調査結果が示されるかは現段階では決まっていないとする一方で、「トランプ大統領は自動車産業が米国経済にとって不可欠であり、経済の強さが安全保障と密接な関係を持つことを理解している」と述べた。また、自動運転や電気自動車などの最新技術は、米国の安全保障にも直接関連しているとの認識を示した。

公聴会では、自動車の業界団体や企業、各国政府など40以上の企業・団体が証言を行った。証言者のうち、自動車と同部品に対する調査開始を支持したのは全米自動車労働組合(UAW)のみで、他の全ての証言者は調査開始を批判した。また、外国政府や外国企業からも多数の反対の声が上がった。

米国自動車工業会(AAM)や米国自動車部品工業会(MEMA)、全米自動車ディーラー協会(NADA)、ビッグスリーで構成される自動車政策会議(AAPC)などの主要自動車団体や全米製造業者協会(NAM)は、追加関税は自動車価格の上昇につながり、消費者の負担増と国内販売の減少および米国産自動車の国際競争力の低下を招くと批判した。さらに、最終的に米国への投資や雇用が減少するなど米国経済に深刻な影響を及ぼすとの懸念を示した。また、安定した生産体制や製品価格を保つためには現行のグローバルサプライチェーンは不可欠で、米国の安全保障への脅威にはならないとの一貫した認識を示し、貿易障壁を取り除くためには関税ではなく、政府間での対話や自由貿易協定の締結などによる解決を求める声が出た。

そのほか、複数の証言者が、本調査開始時の商務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにスポーツ用多目的車(SUV)や小型トラックを含む自動車と同部品が対象と記されているが、明確な範囲が定義されていないと指摘し、対象範囲が広範に及ぶことへの懸念を示した。また、一部の証言者はオフロード車や特殊車両などを対象外とするよう求めた。一般車両との間で共通して使用される部品も多いことから、HTSコードを基に分類して自動車部品へ追加関税を賦課した場合、オフロード車や特殊車両に対しても意図しないかたちで関税が課される可能性があるとの懸念を示した。

(注)調査の概要については、2018年5月25日記事参照

(須貝智也)

(米国)

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