次期大統領AMLO氏、トランプ米大統領に宛てた書簡を公開
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2018年07月25日
次期大統領のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)氏は7月22日、次期外相候補のマルセロ・エブラル氏とともに、ドナルド・トランプ米大統領に宛てた書簡をプレス向けに公開した。同書簡は、7月13日に行われたポンペオ米国務長官らとの会談時にAMLO氏が手渡したもの。公開された書簡には、メキシコと米国の2国間関係に重要な影響を及ぼす、通商、移民、開発、治安の4つのテーマに関わる課題について、包括的に前進させるための提案が盛り込まれている。
通商分野については、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の長期化で経済の不確実性が増し、中長期的な投資が後退することによりメキシコの経済発展の妨げになっていると指摘。現状打開のため、交渉の早期妥結に向けて努力するとし、カナダを含めた3カ国による交渉の再開を提案した。政権移行チームについて、現政権の交渉団と協調するかたちで交渉に参加するとしている。
移民問題については、雇用の創出や地方の開発プロジェクトを通じて、その流出を防ぐと表明。具体的には、経済特区(ZEE)(詳細は2017年11月13日記事、2018年1月9日記事参照)に指定されている、太平洋岸に位置するオアハカ州サリナクルス港と、メキシコ湾岸ベラクルス州に位置するコアツァコアルコス港との300キロをつなぐ、テワンテペック地峡の物流回廊の開発計画を提示している。同計画では、既存の鉄道や道路インフラの拡充、両岸の港湾開発を行うことにより、アジア諸国と米国東海岸との物流を活性化させるほか、周辺地域をフリーゾーン化するとしている。
加えて、米国と国境を接する北部地域にもフリーゾーンを設置し、(1)法人所得税(ISR)税率を30%から20%に引き下げ、(2)付加価値税(IVA)税率を16%から8%に半減、(3)ガソリン価格、ディーゼル価格、電気料金を米国と同水準にするため、生産・サービス特別税(IEPS)を削減、(4)最低賃金を最低でも現在の2倍に引き上げる、とした施策を実行するとした。
また、中米諸国を含めた包括的な不法移民対策については、予算化の準備があることを表明。米国や中米諸国の賛同が得られるのであれば基金を設立し、参加国の経済規模に応じた資金を拠出し合い、75%を雇用創出のためのプロジェクトに利用し、残りの25%を国境の管理と治安対策に利用するとしている。
これに対して、トランプ大統領は7月18日に行われた閣議の冒頭、ポンペオ国務長官らのメキシコ訪問は良い会合だったと評価。また23日にホワイトハウスで開催されたメード・イン・アメリカ・ショーケースでの演説で、AMLO氏を非常に素晴らしい人物と評し「ロペス・オブラドール次期大統領とは、両国にとって劇的で前向きなことを実行すべく話し合っている」と言及している。
(西尾瑛里子)
(メキシコ、米国)
ビジネス短信 95633fd017d3f8ac