ブレグジットセミナー開催、「ノー・ディール」の可能性指摘も

(英国、EU)

欧州ロシアCIS課

2018年07月06日

ジェトロは7月2日、東京で「英国のEU離脱セミナー」を開催した。冒頭、在日英国大使館経済・貿易政策部のジョー・エガトン1等書記官があいさつした。EU離脱(ブレグジット)後も日本は英国の最重要経済パートナーの一国であり続けるとし、2017年のテレーザ・メイ首相の訪日以降、既に2度の日英貿易・投資作業部会が開催されたこと、2018年2月にはメイ首相が対英投資をしている主要な日系企業を対象にラウンドテーブルを開催したことなどを紹介した。

最初に講演したジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課の田中晋課長は、これまでのブレグジットセミナーで実施したアンケート調査の結果を紹介。2017年3~4月と2018年2月時点での回答企業のブレグジットに関する対応状況を比較し、「規制、法制度の変更への対応についてはこの1年で実施を検討中と回答した割合が増えたが、拠点やサプライチェーン、物流ルート、生産体制の見直しについては英国とEUの将来関係に関する事前交渉がまだ4月に始まったばかりということもあり、様子見の日本企業が多い状況のように見受けられる」とした。

欧州委員会や駐日EU代表部での勤務経験がある英国のブリックコートチェンバース法廷弁護士アラステア・サットン氏は、日本企業や政府関係者は英国を通して欧州を見る傾向があるが、今後は(英国以外の)EU27カ国の動向に注意を払っていく必要があるとし、「日本企業や政府関係者の中には、土壇場で合意が形成されるのではないかという希望や期待があるように感じるが、ブレグジット交渉は法的枠組みの中で機能しており、EU27カ国の首脳会議で急に方向性を変える決定をする可能性は非常に低いと考えている」と述べた。加えて、英国内の政治が不安定なため、EUと何の取り決めにも合意できない「ノー・ディール」の可能性は今でも残っていると指摘。6月26日に成立したEU離脱法については、EUとの交渉結果である離脱協定を英国内で実施するため別の法律による手続きが必要と規定されたことを挙げ、今後EU離脱法以上に困難な議論が予想されると指摘。アイルランドとの国境問題についても、EU離脱法に規定された「国境」なしの対応が現実的にどのような方法で実現可能なのか疑問を呈した。

なお、ジェトロは英国のEU離脱について、特設サイトで情報を随時掲載している。

(深谷薫)

(英国、EU)

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