自動車業界はEUとの交渉合意を評価

(米国、EU)

ニューヨーク発

2018年07月27日

米国とEUが貿易摩擦の回避に向けて交渉を開始することで合意した(2018年7月26日記事参照)ことを受けて、米国自動車工業会(AAM)は「貿易障壁の撤廃には関税引き上げより2国間交渉がより効果的であることを示した」と評価した。また、ビッグスリーが組織する自動車政策会議(AAPC)のマット・ブラント会長は「この前向きな発表を基に、追加関税の意図しない影響を回避した上で、新たな雇用や輸出を生み出す機会を米国の自動車産業に与える合意形成に取り組むようトランプ政権に求める」と述べた。

ただし、米国とEUの合意内容は「自動車以外の工業品に関する関税・非関税障壁・補助金の撤廃」を軸としており、自動車の関税削減には触れていない。同分野についての交渉結果は依然不明となっている。

232条の安全保障調査は継続

一方、ウィルバー・ロス商務長官は7月26日、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく、自動車・同部品の輸入に関する安全保障調査(2018年5月25日記事参照)を継続し、8月中に調査結果を公表する方針をあらためて示した。今回のEUとの合意は「交渉が適切に進んでいる間は、(232条による)自動車への関税は課さないということにすぎない」とし、交渉が破綻すれば再びEUを関税の適用対象とする考えを示している(「フォックス・ビジネス」電子版7月25日)。7月25日に行われたトランプ大統領とジャン=クロード・ユンケル欧州委員会委員長の共同会見においても、トランプ大統領が「(米国とEUの)どちらかが交渉の席を立たない限り、われわれはこの合意の精神に反することは行わない」と述べており、交渉継続が関税免除の条件であることを示唆している。

232条に基づく鉄鋼とアルミニウム製品への関税賦課において、当初EUや北米自由貿易協定(NAFTA)諸国は、米国と交渉中との理由で関税賦課が免除されていた。しかし、交渉がまとまらなかったことを受けて、これらの国に対しても6月1日から関税が賦課されている(2018年6月1日記事参照)。

ロス商務長官はさらに、今回のEUとの合意は「トランプ大統領の貿易政策が機能し始めたことを証明するものだ」と述べた。鉄鋼とアルミニウム製品への関税賦課や自動車・同部品への関税賦課の脅しがEUとの合意をもたらしたとの認識を示した上で、「この方式を世界中に展開できれば、われわれの貿易赤字は減少する」との自信を示した。

(鈴木敦)

(米国、EU)

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