国内求職者を優先する実施法が7月1日から施行

(スイス)

ジュネーブ発

2018年06月27日

「外国人に関する連邦法(第121a条)」が2018年7月1日から施行され、スイス企業に対し、特定業種の求人情報の地域職業安定所(フランス語名ORP、ドイツ語名RAV)への通告が義務付けられる。

特定業種の求人情報、地域職業安定所への通告を義務付け

2014年2月9日に右派・国民党が発議した「大量移民制限案」が国民投票にかけられ、50.3%という僅差で可決された。EUや産業界の強い反対を受けた連邦政府は、国民党が求めた滞在許可証発行数の「総数制限」や「年間割当」を除外し、雇用面で国内求職者を優先する実施法を提案、2016年12月に国会で承認された(2017年1月25日記事参照)。

対象となるのは失業率8%超の全業種で、対象業種リスト(ドイツ語)は連邦経済省経済事務局(SECO)のプラットフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語)で閲覧が可能だ。求人情報へのアクセスは、登録後5営業日の間はORP登録者のみに制限され、ORPは応募者情報を3営業日以内に企業に提供する。2020年1月以降は、基準失業率が8%から5%に引き下げられる。

多くの産業団体は、本実施法がEU単一市場へのアクセス維持のための妥協策である点を理解してこれを受け入れ、会員企業に必要情報を発信するなど準備を促している。一方で、スイス雇用主協会などの一部の産業界は、以下の懸念を示している。

  1. 失業率5%超の業種の該当者は約18万人に上り、行政側の処理能力に不安がある。
  2. 求職情報の公募開始はORPへの通知から5営業日を待たねばならず、ORPを介して適任者が見つからない場合、空席期間が企業にとって損失となる。
  3. 失業率の地域差が考慮されていない。
  4. SECOの業種リストは2000年に作られた区分を基にしており、実態に即していない。

一部報道によれば、SECOは、業種区分の見直しや、求職者と企業の自動マッチングソフトの開発などに取り組む意向も示している。運転手、受付、マーケティング、PR、倉庫管理、シェフ、電話オペレーター、職人なども該当するため、スイスで事業を行う日系企業も留意が必要だ。詳細に関しては、最寄りのORPへ確認することを勧める。

(杉山百々子)

(スイス)

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