イランへ電力輸送を開始、米制裁で共同事業に影響も

(アゼルバイジャン、イラン、ロシア、米国)

欧州ロシアCIS課

2018年06月06日

アゼルバイジャンの国有電力大手アゼルエナジーは6月1日、イラン国有のイラン発送電会社(TAVANIR)向けに電力輸送を開始した。アゼルバイジャンメディアの取材にアゼルエナジーが回答したもの(アゼリ・プレス通信6月1日)。

イラン向け電力輸送は6月1日現地時間午前11時に開始された。送電容量は80メガワット(MW)で、アゼルバイジャンからイラン側国境のアスタラ、ムーガーン地方向けに送電される。両国間で双方向の送電が可能な電力融通契約となっており、4月にアゼルバイジャンのナティク・アッバソフ・エネルギー省副大臣がテヘランを訪問した際に合意、調印された。

ロシア含む系統連系も推進

また、アゼルバイジャン政府は4月26日、イラン、ロシアとの3カ国で電力の系統連系を進めることで合意しており、アゼルエナジーのヤフヤ・ババンリィ広報課長は、6月末までにモスクワで3カ国の会合が開催されるとしている。

その一方で、アゼルバイジャンの国有企業によるイラン向け電力輸送を含む両国の共同事業については、米国の対イラン経済制裁の再開(2018年5月9日記事参照)の影響を懸念する声が出ている。在バクーの政治経済アナリストはジェトロのインタビュー(6月4日)に対し、アゼルエナジーに関しては欧米での事業が少なく、ドル決済の必要性が低いことから送電開始に踏み切ったのだろうとの見方を示した。同時に、現在アゼルバイジャン政府が産業多角化に向けて進める非資源分野の開発では影響が大きいと指摘する。

具体例として、a.ロシアとイランをつなぐ国際鉄道輸送路「南北」事業(注)、b.イラン・アゼルバイジャン合弁企業による自動車組み立て事業、c.イランのローハニ大統領のバクー訪問時(2018年3月)に合意したカスピ海での油田・ガス田共同開発、d.両国合弁企業によるアゼルバイジャンでの製薬工場設立案件、e.両国国境を流れるアラス川での2カ所の水力発電所の建設案件、などを挙げる。米国の制裁再開でこれら事業の開始時期が遅れる可能性があると述べている。

(注)アゼルバイジャン側からイラン政府に対し、イラン国内の未整備区間着工のため5億ドルを融資することで合意している(2018年2月1日記事参照)。

(高橋淳)

(アゼルバイジャン、イラン、ロシア、米国)

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