EU外相理事会、今後の通商交渉方針を採択

(EU、日本)

ブリュッセル発

2018年05月23日

EU外相理事会が5月22日、ブリュッセルで開催され、今後のEUとしての通商交渉に関わる新たな方針を採択した。この方針によれば、今後、欧州委員会は「貿易」と「投資」に関わる条項を分離して交渉を進め、EU理事会に勧告を行うこととなる。

欧州委は、投資家と投資先国(政府)との投資紛争の解決手続きについて、国際商事仲裁機関の判断に任せる方式ではなく、専門の公的な投資裁判所に判断を委ねる方式(EUでは投資裁判所制度:ICSと呼ばれる)を推進する立場で、2017年9月に暫定適用を開始したカナダとの「包括的経済貿易協定(CETA)」やベトナムと交渉が妥結している自由貿易協定(FTA)で導入している。

また、国家対投資家の投資紛争の解決手続きの在り方について認識を共有する国については「多国間投資裁判所(Multilateral Investment Court)」を共同で設立する方針(2017年10月2日付政策文書で公開、2017年10月3日記事参照)も明らかにし、当該国との交渉を推進する考えだ。ただし、欧州委は多国間投資裁判所の創設は長期的プロジェクトとなることも認めており、早期の発効が期待される「貿易」部分との交渉スピードの違いが課題となっていた。

日本・シンガポールとの協定調印を急ぐ

また、EU外相理事会は、4月18日に欧州委がEU理事会に対し署名を提案した「日EU経済連携協定(EPA)」と、「EU・シンガポールFTA」および「EU・シンガポール投資保護協定」(2018年4月19日記事参照)について意見交換も行った。EU加盟国の外相からはEUと両国との協定について、その経済的・戦略的重要性から2018年中の調印、2019年までの発効に向けて精力的な作業を継続すべきとの意見が相次いだ。

このほか、欧州委からはメキシコ、チリ、南米南部共同市場(メルコスール)、ベトナムとの通商交渉に関する進捗報告も行われた。

(前田篤穂)

(EU、日本)

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