鉄鋼・アルミの関税賦課、日本は除外せず-ライトハイザーUSTR代表公聴会(1)-

(米国、日本)

ニューヨーク発

2018年03月23日

ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は議会両院の税制関連委員会の公聴会で証言し、トランプ政権の通商政策について議員の質問に答えた。公聴会の内容を2回に分けて報告する。前編は、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課について。

適用除外プロセスは4月下旬までに決着

公聴会は、USTRが2月28日に議会に提出した「2018年通商政策の課題および2017年次報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを議題として、下院の歳入委員会で3月21日に、上院の財政委員会で3月22日に開催された。

ライトハイザーUSTR代表は各公聴会の冒頭で証言し、「トランプ大統領の安全保障政策を支えていく」と述べた上で、「これは貿易政策が、米国をより強くし、国家主権を保持し、敵対的な経済的ライバルに対応し、技術の重要性を理解し、目的が同じ国と協力する機会を探ることに寄与するということだ」と、政権の通商政策の重点を示した。

米国の安全保障への脅威を理由にトランプ大統領が3月8日に決定した232条に基づく鉄鋼とアルミニウムへの関税賦課(2018年3月9日記事参照)に関しては、USTRが担当する国別適用免除の交渉状況の報告を求める声が議員から上がった。

ライトハイザー代表は上院の公聴会で、ロン・ワイデン財政委員会少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)の質問に答えるかたちで、一時的に適用を除外する国として、トランプ大統領が発表している北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国のほか、自由貿易協定(FTA)の再交渉中の韓国、EU、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジルを挙げた。ただし、これらの国への適用免除の継続は米国との交渉結果次第だと強調し、4月下旬までに適用除外のプロセスに決着をつけたいと述べた。

一方、日本については、クレア・マカースギル上院議員(民主党、ミズーリ州)の質問に答え、適用対象外のリストに入っていないと述べている。3月23日以降、この232条に基づく輸入制限措置により、日本からの鉄鋼輸入に25%、アルミ輸入に10%の関税が課される見込みが強くなった(注)。

議会はサプライチェーンや対抗措置の影響を懸念

マカースギル議員はまた、関税賦課による企業のサプライチェーンへの影響について、政権の考えをただした。地元ミズーリ州のベアリングメーカーの生産は米国では入手できない日本の特殊鋼に依存しているとし、こうした小規模企業が個別に品目別の適用除外を申請するのは負担が大き過ぎると批判した。

他国による対抗措置への懸念を訴える声も出た。インディアナ州のジャッキー・ワロースキー下院議員(共和党)は、同州の大豆の半分が中国に輸出されているとし、中国政府が大豆を対抗措置の対象品目として挙げていることに懸念を示した。また、同州産のトウモロコシや製造されたモーターボートもEUの対抗措置のリストに載っているとし、こうした対抗措置による影響を政権はどう考えているのかと、厳しい言葉でライトハイザー代表にただしていた。

(注)国別の適用免除とは別に、商務省は製品別の適用免除の申請を受け付けている(2018年3月22日記事参照)。

(鈴木敦)

(米国、日本)

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