首相が辞意表明、政府は非常事態宣言を発令-首都に混乱はみられず-

(エチオピア)

アディスアベバ発

2018年02月19日

2月15日にハイレマリアム首相が突然、辞意を表明し、翌16日には政府が国家非常事態宣言を発令した。シラジ国防相は17日、宣言は全国を対象に6カ月間維持することに加え、16項目の制限事項を発表した。18日までのところ首都アディスアベバ市内では混乱はみられない。

非常事態を避けるための予防措置

政府が16日夜(現地時間)に発表した国家非常事態宣言による制限事項は16項目。2016年10月~2017年8月の前回の非常事態宣言では、30項目以上の制限項目があった。通信遮断の可能性や、犯罪被疑者の令状なしの拘束などが含まれる点は前回と共通する。相違点としては、今回は物流の安全、生活に欠かせない商品やサービスの提供が保証されていることだ。政府は非常事態宣言の発令と関連措置は日常生活の安全と安心をもたらすとしており、非常事態に陥るのを避けるための予防措置といえそうだ。

15日の首相の辞意表明以降、18日までアディスアベバ市内で混乱はみられない。ジェトロが入居するビル1階のカフェも17日のにぎわいはいつもどおりだった。取引銀行によると、首相の辞意表明後、個人事業主の現金引き出しは増加したものの、取り付け騒ぎには至っていないという。17日朝から予定どおり運動会を実施したインターナショナルスクールもある。前回の非常事態宣言と比べて、治安維持に当たる警官や軍関係者などが目立つということもない。携帯電話やインターネットも通常どおり使用可能だ。

写真 いつもどおりにぎわう市内のカフェ(ジェトロ撮影)

地方の反政府活動は沈静化せず

ハイレマリアム首相の辞意表明は、15日に連合与党エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)の緊急幹部会議で受け入れられた。首相は前回の国家非常事態宣言発令以降、政治的自由や雇用・経済的参画機会の拡大、行政改革に取り組んでいた(2017年8月7日記事参照)。しかし、アムハラ州やオロミア州など地方で散発する反政府活動が沈静化することはなく、2月12日にはオロミア州で青年グループを中心に商店閉鎖やデモが3日間の予定で呼び掛けられ、幹線道路では投石や交通封鎖などが発生していた。

首相は辞意表明に当たり、国内の安定のためには新たなリーダーが必要と述べており、最大州のオロミア州(人口の34%、米CIA調べ)出身の首相が誕生するのか、新首相の下で融和策から強硬策に方針転換があるのかなど予断を許さない。与党が評議委員会を開催し国民議会の承認を経て新たな首相が誕生するまでは、ハイレマリアム氏が引き続き首相の任に当たる。

(関隆夫)

(エチオピア)

ビジネス短信 c6a8fbbb2e0c6f5d