環境規制強化に伴い社内体制の整備が重要に-広州でセミナー、企業の対応を解説-

(中国)

広州発

2018年01月16日

ジェトロは11月22日、近年の環境規制強化の動きや企業側の対応方法に関するセミナーを広州で開催した。2015年1月の改正環境保護法の施行後、各種関連法が相次ぎ改正、施行された。中央の環境部門が地方での査察に乗り出すなど、企業には関連法規の一層の順守が求められている。

汚染物質などの排出に納税義務

セミナーでは、環境コンサルタントで佛山早稲田科技服務の林慈生董事長が以下のとおり講演した。

2015年1月1日に施行された改正環境保護法では、主に次の点が改正された(2016年12月27日記事参照)。

(1)環境部門の権限および責任の強化

・県級以上の環境部門に汚染物質排出に関する現場検査の権限を付与した。

・許認可を違法に発行、または企業の違法行為を隠蔽(いんぺい)した場合、当該部門の責任者は刑事責任を追及される。

(2)企業に対する罰則の強化

・汚染物質を排出した企業などが期日までに過料を納付しない、または是正命令に従わない場合、対応が期日から1日遅れるごとに同額が追加される。

・工場などの建設工事を、法に定められた環境アセスメントを行わずに実施し、工事停止命令に従わない場合、または無許可で汚染物質を排出し、排出停止命令に従わない場合は、県級以上の環境部門は当該案件を公安部門へ移管し、その責任者を10日から最長15日間拘留できる。

(3)国民に対する情報開示義務

・国民(工場などの周辺住民)に、法律に基づく環境情報の入手、環境保護活動への参加、ならびに工場などを監督する権限を付与した。環境部門には、違法行為を行った企業名などの公開を義務付けた。

2018年1月には環境保護税法が施行される(注1)。同法により、中国の領土および領海内で課税対象となる汚染物質などを排出する、企業および経営者には納税義務が課される。課税対象となるのは、大気・水質汚染物質、固形廃棄物、騒音などだ。しかし、企業などが、法に基づき設立された処理施設で、汚染物質などを処理または移送する場合は納税不要となる。

また、課税対象となる大気・水質汚染物質の濃度が国および地方の排出基準を30%下回る場合は税額を25%、50%下回る場合には50%軽減する措置もある。

納税額については、a.大気・水質汚染物質は当量数(注2)×適用税率、b.固形廃棄物は排出量×適用税率、c.騒音は国家基準を超過したデシベル数にそれぞれ応じた税額が課される。

納税義務の発生時期は汚染物質などの排出当日であり、企業などは四半期ごとに排出地の税務部門に申告、納付する必要がある。

国より地方の規定・基準が厳格

中国では2016年1月に大気汚染防止法の改正法が施行された。それに続いて、2018年1月には水質汚染防止法の改正法が施行される。いずれも改正環境保護法の施行を受け、県級以上の環境部門に取り締まりの権限を与え、罰則を強化している。大気汚染防止法および水質汚染防止法とも企業に対し、無許可で汚染物質を排出した場合や基準を超過して汚染物質を排出した場合などに10万元(約170万円、1元=約17円)以上100万元以下の罰金を科すとしている。

2017年7月には、汚染地土壌環境管理試行弁法が施行された。汚染地とは、非鉄金属の冶金(やきん)、石化、コークスを使用した製錬、電気メッキなどが行われた、または危険廃棄物の貯蔵や処理に利用され、汚染濃度が基準値を超える土地を指す。同弁法によると、土壌を汚染した企業などは、土壌の汚染対策と修復に終身的な責任を負う。こうした企業などから土地使用権や債権、債務を継承した者は、土壌の汚染対策と修復を履行する義務を負う。

中国では中央政府による法律の公布・施行後に、地方で国より厳しい規定・基準が制定される傾向にある。企業には地方の規定や基準を順守するよう求められるため、地方での規定の制定・改正の動向をより注視する必要がある。

法改正の動向などに日頃から注意を

近年、中央政府の環境部門は地方保護主義の打破を目的として、国内各地で深夜、休日を問わず施設の査察を実施している。広東省では、2016年11月下旬から1カ月間査察が行われ(注3)、6,248社が改善命令を受けた。

環境部門は企業で査察を行う際、主にa.汚染物質の内容および量が基準値以内か、b.適切な処理設備が設置され正常に稼働しているか、c.汚染物排出許可証が有効か、d.環境アセスメント報告書の記載内容と汚染物質の排出・処理状況に相違がないかを確認し、問題があれば摘発を行う。

a~dに加え、環境部門による摘発を受けないためにも、企業側には日頃から次の対応が求められる。

(1)環境関連法規の公布および改正内容のフォロー。

(2)上記(1)を踏まえた社内規定の見直し。

(3)社内規定の運用状況の点検。

(4)環境関連法規などに関する社内研修の実施。

(5)上記(1)~(4)に専従するスタッフの配置。

(注1)2018年1月16日時点で細則はまだ公表されていない。

(注2)当量数は、当該汚染物質の排出量÷当量値により算出。当量値は、環境保護税法11条に汚染物質ごとに記載されている。

(注3)罰金総額は1億3,800元、118人が行政拘留に処された。

(粕谷修司)

(中国)

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