企業は汚染物質や設備などの点検強化で対処を-改正環境保護法セミナーを広州で開催-

(中国)

広州発

2016年12月27日

 ジェトロ広州事務所は11月22日、2015年1月に施行された改正環境保護法による取り締まり状況と企業の対処方法に関するセミナーを開催した。規制の強化に加え、公益訴訟の主体拡大や環境当局の権限強化を受け、環境汚染事案の取り締まりが強化されている。

<公益訴訟が増加し処罰も急増>

 201511日に施行された改正環境保護法(改正法)では、新たに環境汚染企業に対し周辺住民への情報開示義務、社内での環境保護規定の制定義務が定められた。また、違法企業に対する罰金処分が強化され、責任者などの身柄拘束処分も明記された(2015年2月27日記事参照)。

 

 セミナーでは、環境コンサルタントで佛山早稲田科技服務の林慈生董事長が以下のように講演した。

 

 2015年に中国全土で当局から査察を受けた企業は177万社に上り、そのうち行政処罰が下されたのは97,000件、罰金額は前年比34%増の425,000万元(約7225,000万円、1元=約17円)、逮捕された容疑者は42%増の12,000人となっている。

 

 罰金額や逮捕者が急増した要因については、改正法第58条により、環境公益訴訟を起こせる主体が拡大した点が大きい。同条文には、市級以上の民生当局に登記し、設立から5年以上経過し、かつ違法記録のない環境公益活動組織(環境保護団体など)は、汚染企業を見つけ次第、裁判所へ公益訴訟を提起可能とある。現時点で提起可能な団体は中国全土で300に上る。

 

 また改正法第24条では、県級以上の環境当局に対して汚染企業へ出向き査察を行う権限を与えている。一方で、環境汚染事案の監督管理を怠った当局の責任者に対しては刑事責任を負わせる旨も明記されている。

 

 違法行為が発覚した企業に対しては、当局から生産活動の即時停止および関連設備の差し押さえが指示される。期限内に指示に従わない場合、工場への送電停止や閉鎖のほか、責任者などは最長15日間身柄を拘束される(行政拘留処分)。

 

<工場などの増改築時は要注意>

 行政拘留処分が適用される主なケースは次のとおり。

1)環境アセスメントを実施せずに工場や生産工程の建設工事を実施したことが発覚した後、当局による工事停止命令を無視した場合

2)事前に許可を得ずに汚染物質を排出し、当局の排出停止命令を無視した場合

3)汚染物質の測定データを改ざんし、汚染物質を違法に排出した場合

4)国家が禁止する農薬を生産または使用し、当局による停止命令を無視した場合

 

 最近は、工場や生産工程の増改築の際に環境アセスメントを実施せず、当局から違法行為と見なされる(1)のケースが多い。

 

 こうした環境規制強化の動きに対し、企業はa.法律の順守はもちろん、b.汚染物質の測定、c.クリーン生産、d.内部の環境管理強化に注力すべきだ。

 

 a.については、改正法とは別に条例を公布・施行する地方政府もあり、内容を把握するため、地方の環境当局が主催するセミナーや研修に積極的に参加するのが望ましい。

 

 b.に関しては、工場および生産工程の増改築や原材料の調整などにより、工場から排出される汚染物質の種類や量が変化することがある。この場合も再稼働前にあらためて環境アセスメントを実施し、これにより得られた測定データを基に環境設備を改良する必要がある(注)。

 

 c.については、資源の利用効率が高く、汚染物質の排出量が少ない生産設備を導入することだ。中国政府はクリーン生産を推奨しており、生産工程の改良や環境設備の導入により、地方政府から税制上の優遇措置などを受けられることもある。

 

 d.については、法律に基づき社内で管理監督制度を整備し、定期的に各種汚染物質の排出量、環境設備の稼働状況、各種検査項目の指標などを点検することだ。

 

(注)汚染物質については、排出時の濃度が基準値以下でも、年間の排出総量が許容量を超過すると罰金や刑事処分の対象となる。罰金額は、企業の改善措置が期日から1日遅れるごとに同額が倍加される。また、許容量の超過など違法排出により2年間で2回の行政処罰を受け、3回目が発覚すると、法人の代表者は刑事処分を受ける可能性がある。改正法施行後は、取り締まり強化により刑事処分案件が増加している。

 

(粕谷修司)

(中国)

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