1月からの最低賃金が正式決定-国家賃金評議会による諮問どおりの水準に-

(ベトナム)

ハノイ発

2017年12月26日

ベトナム政府は12月7日、2018年の最低賃金に関する政令141号(141/2017/ND-CP)を公布した。改定後の月額最低賃金は、ハノイ市、ハイフォン市、ホーチミン市などの地域1で398万ドン(約175ドル、1ドル=約2万2,713ドン)に引き上げられる。

地域1は6.1%の引き上げ

ベトナム法規範文書発行法(以下、法)によると、政令など中央国家機関の定める法規範文書は署名から発効まで45日より長い期間を設ける必要がある(法151条1項)ため、政令141号(以下、政令)の施行は2018年1月25日からとなるが、政令の規定内容は同年1月1日から適用するものと定められている(政令6条1項)。同法では、一定要件を満たす場合には法規範文書に遡及(そきゅう)的効力を規定することが認められており、政令は同規定を適用しているものとみられる(法152条1項)。

政令により、2018年1月1日から適用される最低賃金額は、ハノイ市、ハイフォン市、ホーチミン市を含む地域1が398万ドン(前年比6.1%増)、地域2(ダナン市、バクニン省など)が353万ドン(6.3%増)、地域3(ハナム省など)が309万ドン(6.6%増)、地域4(地域1~3以外)が276万ドン(7.0%増)となる。政令の策定に当たっては、国家賃金評議会が8月に諮問案を政府に提出しており、規定された賃金水準はいずれも同諮問案に沿ったかたちとなった(2017年8月21日記事参照)。

労働生産性の伸びを上回る賃金上昇がリスク要因に

2016年から2017年にかけては、それ以前と比較して賃金上昇圧力が緩和されつつあるものの、産業界からは賃金上昇率が労働生産性の伸びを上回っていることに対する懸念の声が強い。12月12日に開催された各国産業界とベトナム政府の定期対話「ベトナム・ビジネスフォーラム」において、ベトナム商工会議所のブー・ティエン・ロック会頭は、企業が抱える課題の1つとしてこの賃金問題を指摘した。また有識者の1人であるベトナム経済政策研究所のグエン・ドゥック・タイン所長も、労働生産性向上と経済成長の不均衡が続けば、「人材の蓄積を妨げ、投資家の意欲や企業の利益、さらには経済競争力を低下させるだろう」と警鐘を鳴らしている(「ベトナムエコノミックタイムズ」紙9月13日)。

ベトナム統計総局が発表したデータによると、ベトナムの労働生産性の向上率を2015年時点で周辺国と比較すると、シンガポール(約4%)、マレーシア(約17%)、タイ(約35%)より依然として低い水準にあり、政府としても労働生産性向上に取り組むことが喫緊の課題となっている。

一方、北部の日系製造業関係者によると、ハイフォン市やバクニン省など大手外資系製造業の進出が相次いでいる地域では、既に一部工業団地などで労働需給の逼迫に伴う賃金水準の上昇がみられるほか、今後さらに他の地域にも拡大するリスクを指摘する声もある。日系企業の間では引き続き、労務問題は経営上の大きな課題の1つになっている。

(竹内直生)

(ベトナム)

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