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現行GSPは2017年末で失効、更新は不透明-議会には2018年初めの審議を目指す意向も-

(米国)

ニューヨーク発

2017年12月28日

議会は、一般特恵関税制度(GSP)の更新法案を可決することなく、2017年の会期を終える。現行GSPは12月31日に失効するため、2018年以降の輸入については同制度による関税免除が受けられない。GSPには超党派の支持があるが、2018年にも予算関連法案などの議会審議が待ち受けており、更新の見通しは依然として不透明だ。なお、税関国境保護局(CBP)は、今後更新がなされた場合に失効期間に支払った関税の還付が自動的に行われるように、2018年以降の輸入についても自動通関申告システム(ABI)にGSPの特別プログラム表示(SPI)を記入することを輸入者に推奨している。


対象は120カ国・地域

GSPは、途上国の経済発展を促すことを目的に、これらの国からの米国への輸入にかかる関税を原則として免除する制度。対象は120カ国・地域で、そのうち44カ国・地域が関税免除となる品目数が多い後発開発途上国となっている(注1)。

2016年のGSPの利用額は187億ドルで、国別ではインド(47億ドル)、タイ(39億ドル)、ブラジル(22億ドル)、インドネシア(18億ドル)、フィリピン(15億ドル)などからの輸入で利用が多い。品目別では、自動車部品(10億ドル)、貴金属・宝石(6億3,700万ドル)、記念碑・建築用石材(4億7,600万ドル)、ゴムタイヤ(4億6,300万ドル)、合金鉄(4億6,000万ドル)などの輸入で多く利用されている。

現行のGSPは、2015年6月29日にオバマ大統領が署名した「2015年特恵関税延長法」(H.R.1295)に基づくもので、失効期限が2017年12月31日に設定されている(2015年8月11日記事参照)。議会はGSPの更新法案を可決することなく会期を終える見込みのため、同制度は2017年末で失効することが確実視される。このため、2018年以降の輸入については、GSPによる関税免除を受けられなくなる。

優先度が高くないGSP更新

GSPは、これまでも失効と更新が繰り返されてきた。現行のGSPの更新の前にも約2年間の失効期間(2013年8月1日~2015年7月28日)があった。

GSPの更新に対しては、議会や産業界で広範な支持がある。ラルフ・ノーマン議員(共和党、サウスカロライナ州)とジム・ヒメス議員(民主党、コネティカット州)など超党派の38人の下院議員は10月27日、ケビン・ブレイディ下院歳入委員長(共和党、テキサス州)とリチャード・ニール少数党筆頭委員(民主党、マサチューセッツ州)にGSPの更新を求める書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を出した。これら超党派の議員は「GSPの失効期限が迫っていることは、同制度を頼りにしている米国企業に新たな不透明性をもたらしている。これらの多くの企業は2018年の配達に向けた注文を既に行っている」「事業や労働者、地域に投資するために米国企業が必要とする透明性を確保するよう、議会は長期間にわたるGSPの更新法を可能な限り迅速に可決すべきだ」と述べている。

また11月14日には、351の企業やビジネス団体が下院歳入委員会と上院財政委員会の指導部に対して、GSP更新を訴える書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を出している。この書簡には、米国商工会議所や米国アパレル・履物協会(AAFA)、全米小売業協会(NRF)などの主要ビジネス団体のほか、電気や自動車関連を中心とした在米日系企業の署名もみられる。

しかし、GSPの更新法は議会にまだ提出されていない。GSPの更新に強く反対する勢力は議会にもいないが、「他の政策事項と比較してGSPの優先順位は低く、GSP更新は他法案の審議状況により影響を受ける」(ワシントンの議会政治専門家)状況だ。2017年においては、税制改革など他の重要法案の審議に時間を要した中で、GSP更新に向けた動きはみられなかった。

報道によると、ブレイディ下院歳入委員長は「年明けの早い段階でGSP更新法案の審議と議会通過を目指す」としている。ただし、年明けには予算関連法案など重要法案の議会審議が控えており、GSP更新の見通しは依然不透明になっている。予算関連法案と抱き合わせてGSP更新法が提出される可能性もあり、今後の議会審議を注視する必要がある。

トランプ政権は独自に対象国の見直しを行うと発表

GSPの更新に際しては、更新により失われる関税収入を、どの財源で補填(ほてん)するかが常に議論となる。今回の更新に関しても、そうした代替財源の確保が1つの課題となるとみられる。

また、米国通商代表部(USTR)は10月24日、現在のGSP対象国・地域が米国政府の定めるGSP供与の基準(注2)を満たしているかを、政府主導で審査する制度を新設すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。現行制度では、関係者からの見直し要請などに基づきGSP対象国の見直しを行っているが、これに加えて3年ごとに米国政府が省庁横断的な体制で独自に対象国の見直しを行うとしている。USTRによると、初回はアジア諸国が対象になる。

一方、トランプ大統領は12月22日、知的財産保護が不十分だとしてウクライナのGSP対象資格を停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。逆に、オバマ政権下で停止されていたアルゼンチンの対象資格は復活させている(注3)。

CBPはGSP特別表示の記載を続けるよう「強く推奨」

税関国境保護局(CBP)はウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおいて、GSPの失効期間中でも、自動通関申告システム(ABI)での申請時にGSPの特別プログラム表示(SPI)を記すよう輸入者に「強く推奨」するとしている。CBPは、GSPが更新された場合には、GSPの特別表示がされている輸入については自動的に還付手続きが行われるようにしたいとの意向を示している。前回のGSP再開時にも、CBPは同様の対応をしている(2015年8月11日記事参照)。

なお、アフリカ諸国の米国向け輸出に利用できるアフリカ成長機会法(AGOA)の失効期限は2025年9月末となっており、同制度に基づく関税免除は引き続き利用が可能になっている(2015年7月27日記事参照)。

(注1)具体的な対象国・地域は、国際貿易委員会(ITC)の米国関税率表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの注釈4(General Note4)を参照。4(a)ではGSP対象国・地域、4(b)では後発開発途上国、4(d)ではGSP対象外となる品目と原産国・地域のリストを掲載している。GSP税率は、米国関税率表の「特別税率(Rate of Duty:Special)」欄に記載されている特別プログラム表示(SPI)が「A」「A+」「A*」の3種類で表示されているものに該当。「A」は全GSP対象国・地域、「A+」は後発開発途上国からの輸入製品を対象とし、「A*」はGSP対象国・地域のうち、4(d)に掲載されている品目と原産国・地域を特恵の対象外とすることを示している。

(注2)具体的な基準はGSPを規定している1974年通商法参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同法には、世界銀行の高所得国になった国を強制的に適用対象外する「卒業基準」(503条)のほか、知的財産や労働者保護など米国政府が定める条件の順守状況に基づいて各国に対するGSP供与の有無を決定する権限を大統領に与える規定がある。

(注3)アルゼンチンに対するGSP対象資格の停止に関しては2012年4月12日記事参照

(鈴木敦)

(米国)

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