GSPによる関税免除が再開

(米国)

ニューヨーク事務所

2015年08月11日

 米税関国境保護局(CBP)は、途上国からの輸入関税を免除する一般特恵関税制度(GSP)の申請受付を7月29日に再開した。GSPは2013年7月末に失効しており、2年ぶりの再開となる。失効期間中に輸入者が支払った関税も、遡及(そきゅう)適用による還付が行われる。ただし、失効期間中に資格を失ったバングラデシュとロシアからの支払い済み輸入関税は遡及適用の対象外となった。

2017年末までGSPを延長>

 CBP729日、GSPによる関税免除の申請受付を再開した。同日以降にGSP対象国・地域から米国に輸入された物品(保税倉庫から国内消費用に引き出されるものを含む)について、輸入者からの申請に基づき、関税を免除する。

 

 今回の措置は、オバマ大統領が629日に署名した「2015年特恵関税延長法」(H.R.1295)に基づく(2015年7月27日記事参照)。同法の規定により、大統領による署名から30日後の729日から適用が開始された。

 

 GSPは、途上国の経済発展を促すことを目的に、これらの国からの輸入にかかる関税を原則、免除する制度。2013年に議会が同制度の延長法案を可決することができず、同年731日に失効して以降、産業界から更新を望む声が強く上がっていた(2015年5月19日記事参照)。今回の更新により、GSP20171231日まで延長される。

 

 GSPの対象は122ヵ国・地域で、そのうち43ヵ国・地域が関税免除となる品目数が多い後発開発途上国だ(注1)。GSP失効前の2012年でみると、同制度を利用した輸入額は199億ドルで、インド(47億ドル)、タイ(39億ドル)、ブラジル(24億ドル)などからの輸入額が大きい。

 

 GSPの対象製品は約5,000品目に上る(HSコード8桁ベース。後発開発途上国のみを対象とした1,500品目を含む)。2012年のGSP利用輸入額を製品別にみると、空気式ラジアルタイヤ(47,000万ドル)、アルミ合金(41,000万ドル)、フェロクロム(38,000万ドル)、銀製アクセサリー(37,000万ドル)の順で利用されている。

 

<ロシアとバングラデシュは遡及適用の対象外>

 2015年特恵関税延長法には、GSP失効期間(201381日~2015728日)に輸入者が支払った関税を、遡及適用により還付する条項も盛り込まれている。CBPは同規定に基づき、関税還付の手続きを開始した。

 

 CBPによると、自動通関申告システム(ABI)経由で既に申請が行われており、特別プログラム表示(SPI)に「GSP」と記入されているものについては、自動的に還付手続きが行われる。CBPは、GSP更新後の関税還付手続きを円滑に行うため、失効期間中においても通関書類にSPIを記入することを輸入者に促していた。この場合、輸入者が関税還付に係る申請をあらためて行う必要はない。他方、ABI経由でない申請またはSPIが記されていない申請については、20151228日までに関税還付の申請をCBPに対して行う必要がある(注2)。

 

 2015年特恵関税延長法は、2015729日時点でGSPの対象だった国・地域に遡及適用の対象を限定している。失効中に資格変更のあったバングラデシュとロシアについては、失効から変更までの間の輸入の扱いが関心の1つだったが、両国とも遡及適用は行わないことが728日のに明記された。バングラデシュは、労働者保護が不十分なことを理由に、20139月に資格停止の状態にある。ロシアは、経済が十分に発展しているとの理由で、2014103日にGSPの対象から外れている。

 

(注1GSP対象国・地域は国際貿易委員会(ITC)の米国関率表の注釈に記載がある。4a)ではGSP対象国・地域、4b)では後発開発途上国、4d)ではGSP対象外となる品目と原産国・地域のリストを掲載している。GSP税率は、「特別税率(Rate of DutySpecial)」欄に記載されている特別プログラム表示(SPI)が「A」「A+」「A*」の3種類で表示されているものに該当。「A」は全GSP対象国・地域、「A+」は後発開発途上国からの輸入製品を対象とし、「A*」はGSP対象国・地域のうち、4d)に掲載されている品目と原産国・地域を特恵の対象外とすることを示している。

(注2)関税還付に関する申請方法の詳細は、CBPウェブイト参照。

 

(鈴木敦)

(米国)

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