「ビジネスラウンドテーブル」開催、日系企業が政府に要望

(ルーマニア)

ブカレスト発

2017年11月30日

在ルーマニア日系企業とルーマニア政府との「ビジネスラウンドテーブル」が11月16日、首都ブカレストで開催された。会合には日系企業13社、ルーマニア側からは閣僚2人、与党副党首1人を含む5人が出席し、日系企業が抱える課題について意見交換を行った。中でも、11月8日に出された税制改正に関して日系企業から質問と要望が相次いだ。

2閣僚や与党副党首らが出席

ジェトロは、ルーマニアのビジネス環境・貿易・起業省、投資誘致機関のインベスト・ルーマニアおよび在ルーマニア日本大使館の共催の下、在ルーマニア日系企業のビジネス環境の改善要望をルーマニア政府に提言する「ビジネスラウンドテーブル」を11月16日に首都ブカレストで実施した。日系企業13社、ルーマニア側からはイラン・ローファー・ビジネス環境・貿易・起業相およびボレル・イリエ議会連絡相、与党・社会民主党ジョルジアン・ポップ副党首ら5人が出席した。

ローファー氏は9月に日本を訪れ、日本企業に対しルーマニアへの投資を呼び掛けたばかり(2017年10月6日記事参照)。今回の会合は、この訪日の際にジェトロから在ルーマニア日系企業との対話の場を設けるよう要請を受け、実現したもの。日系企業とルーマニア政府間の対話は、これまでも在ルーマニア日本商工会や日本大使館が中心となり実施されてきた。今回の会合には商工会会員以外の日系企業も複数参加し、ルーマニアのビジネス環境や日系企業が抱える課題について話し合った。

石井喜三郎駐ルーマニア大使は冒頭あいさつで、「日本企業のルーマニアへの進出、投資拡大は続いている」としつつ、「道路をはじめとするインフラ整備は日系企業が強く要望するビジネス環境の改善事項の1つ。また、官民連携(PPP)型インフラ事業への関心も高まっており、透明性のある制度が求められる」と述べた。ローファー氏は「9月の訪日でルーマニアに対する日本企業のニーズを把握することができた。加えて、本会合のように企業の代表と直接コミュニケーションを取ることが重要」と述べ、日系企業との意見交換の場を歓迎した。

写真 「ビジネスラウンドテーブル」の様子(ジェトロ撮影)

税制改正に質問や要望相次ぐ

続いてジェトロから、ビザや労働許可証取得に係る手続きの改善、度重なる最低賃金の引き上げに対する懸念など、7項目の日系企業の要望を伝えた。続く意見交換のセッションでは、11月8日に緊急命令として発令されたばかりの税制改正に関して、日系企業から質問と要望が相次いだ。本改正のポイントは、社会保険の負担を雇用者から被雇用者に大幅に移行するというものだ。企業は、従業員から負担増をカバーするだけの賃金引き上げを求められている(2017年11月22日記事参照)。ローファー氏は「今回の税制改正は、企業に追加負担を課すことなく、ルーマニア国民が受け取る年金や給与の増加につながる。現在ルーマニアが抱えている税徴収の問題を正すための改正だ」と説明した。一方で、日系企業からは従業員のグロス賃金を上げるリスクや、約1カ月という短期間で給与体系を見直す管理コストを指摘する声が聞かれた。

また今回の改正により、IT企業の従業員にも、これまでIT産業へのインセンティブとして免除されていた所得税が課されることになる。出席した日系IT企業からは、対策を求める意見が出された。ローファー氏は「ルーマニアのIT産業は政府のインセンティブによって成長した。現在、税改正がIT企業にもたらす負担増の解決策を探している。年末までには、IT企業の従業員の手取り給与が現在と同額になるような解決策を見つけたい」と説明した。

好調な経済、ビジネス環境には課題山積

欧州委員会によると、ルーマニアの2017年の実質GDP成長率(予測値)は5.7%と、EU28カ国中トップだ。好調な経済を追い風に、日系企業の進出や投資拡大の傾向は続いている。一方で、不十分なインフラ整備、頻繁な税改正、不透明な入札手続きなどビジネス環境には課題も多い。本会合後、ジェトロは会合の場で出た意見を加えた改善提言書を、出席した2閣僚と与党副党首に提出した。

日EU経済連携協定(EPA)の発効による両国間の貿易発展も視野に入れ、ジェトロとしては今後も日系企業とルーマニア政府との定期的な対話の場を設けていく方針だ。

(藤川ともみ)

(ルーマニア)

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