贈答用を中心に日本産ナシへ高い関心-ホーチミンで茨城県産ナシのプロモーションイベント-

(ベトナム)

ホーチミン発

2017年11月07日

「ジャパンフェア2017・茨城県産梨プロモーションイベント」が9月23日、ホーチミン市で開催された(主催:イオンベトナムおよびジェトロ、協力:茨城県、下妻市、JA常総ひかり、JA全農いばらき)。現地消費者にとっては高価な日本産ナシではあるが、贈答用として購入したいと考える多くのベトナム人が高い関心を寄せていた。

ベトナムとの交流図る茨城県

日本産ナシの生果実の対ベトナム輸出は、ベトナムの植物検疫法制定により2007年以降禁止されていたが、2017年1月16日付で解禁された(2017年2月10日記事参照)。2国間協議で定められた生産園地の登録などの検疫条件を満たすナシの輸出が8月から行われている。イオンベトナムの店頭では、8月下旬から茨城県産と福島県産のナシ「幸水」が、10月からは宮城県産のナシも販売が開始された。

今回のイベント会場のイオンベトナム・タンフーセラドン店には、開店直後から多くの地元住民が訪れた。本イベントのオープニングセレモニーで、ジェトロ・ホーチミン事務所の滝本浩司所長は「ベトナムへの日本のナシの輸出には、産地登録などの手続きの対応、生産管理、輸送手段の確保など多くの関係者の苦労があった。ジェトロは広報面で協力していきたい」とした。また、イオンベトナムの西峠泰男社長は「ベトナム人は伝統的小売店で買い物をすることが主流だった。2014年1月のイオン開店以降、生鮮食品の販売には大変な時期もあったが、現在は売り上げが伸びている。ベトナムでは日本産食品への信頼が高く、販売において有利だ。日本産の旬のナシをベトナムのお客様に味わってもらいたい」と述べた。

生産者側からのあいさつでは、ナシの栽培に光センサーを用いた品質管理など、高度な技術を活用していることを説明し、甘さやおいしさだけでなく、ベトナムの消費者の関心が高い「食の安全性」についても強調した。また、ベトナムと茨城県との交流について、ベトナム南部のハウザン省関係者が下妻市を視察したことや、同市が7月下旬にホーチミン市で行われたジェトロ主催の商談会に参加したことに触れ、ナシの販売には両国の協力と関係強化が重要との認識を示した。生産者など関係者はこれをベトナム市場での日本産果実の地位向上につなげたいとしている。

写真 関係者によるテープカット(ジェトロ撮影)

高価だが、消費者は贈答用として購入

今回のイベントでは、高級ブランドの下妻産「豊水」の試食も行われ、多くの消費者が集まった。現地報道では、消費者が日本産ナシを購入する主な理由として、贈答用を挙げている。茨城県産「豊水」の販売価格は1キロ当たり24万8,000ドン(約1,240円、1ドン=約0.005円)で、2017年1月1日施行のホーチミン市の最低賃金(月額)が375万ドンであることを考えると高価な商品だが、「特別な贈り物」用とするベトナム人を中心に購入されているもようだ。

本イベント用のナシは、日本からベトナムへ航空便または船便で輸出された。輸送は通常、航空便では2日間、船便では7日~10日間程度かかる。イオンベトナムではこれまでに日本産リンゴの販売を行っているが、イオンベトナムの妹尾文郎商品本部長は「リンゴに比べナシは賞味期限が短く、販売時期に合わせた輸送が難しい」と話す。リンゴは初年度の2016年に20トンを輸入し即時に完売したが、100トンを輸入した2年目の2017年は一部店舗で売れ行きが振るわなかったという。賞味期限の短いナシの販売においては、リンゴ以上に早く売り切るための工夫が必要となる。

各品種の知名度向上に期待

イオンベトナムは、茨城県、福島県、宮城県のナシを、8月下旬から11月中旬までベトナムの各店舗で販売する。販売する品種は、茨城県産(8月下旬~11月中旬)の「幸水」「豊水」「新高」と、福島県産(8月下旬~11月中旬)の「幸水」「二十世紀」「新高」、宮城県産(9月下旬~11月中旬)の「豊水」「あきづき」で、売り場には「KOUSUI」「HOUSUI」などと品種名がローマ字でも表示され、各品種のベトナムでの知名度向上が期待される。

 写真 地元メディアの取材を受ける西峠社長(ジェトロ撮影)

(小林亜紀)

(ベトナム)

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