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EU離脱強硬派に勢い、産業界には絶望的な見方も-保守党が年次党大会開催(3)-

(英国)

ロンドン発

2017年10月19日

与党・保守党が10月1~4日にマンチェスターで開催した年次党大会では、主会場での閣僚らの演説のほか、周辺の会場でも業界団体などが500件近いサイドイベントを開いた。その中でも、EU離脱強硬派とされる議員らが参加するイベントは会場から人があふれるほどだった。強硬派の勢いを前に、産業界からは「絶望」の声が出ていた。保守党大会報告の最終回。

強硬派の議員らが積極的に発言

4日間にわたる党大会では、主会場における閣僚らの演説に加えて、周辺の会場で業界団体や政治団体などが500近いサイドイベントを開催した。テーマはEU離脱(ブレグジット)に関連したものが多く、各セッションでは、EU離脱方針やその後の政治・経済の見通しなどについて議員らがそれぞれの主張をするなど、まさに2016年6月の国民投票のキャンペーンさながらの様子となった。

数多いイベントの中でひときわ目立っていたのは、EU離脱強硬派で知られるジェイコブ・リースモッグ議員で、精力的に数多くのイベントに登壇した。同氏が登壇したイベントは会場から人があふれる人気ぶりで、特に10月2日のマンチェスター市庁舎での会合は、1,000人ほどの参加者を集め熱気に包まれた。リースモッグ議員は、EUとの交渉では安全保障や市民権など寛容な態度で臨むべきとしつつ、「悪い合意であれば、合意なしの方が良い(No deal is better than bad deal)」の姿勢を貫くべきだと主張。移行期間もEUの法的支配を長引かせるだけで望ましくなく、「さっぱりとしたEU離脱(Clean Brexit)」が最良だとした。EUが求める清算金についても、法的に支払い義務はなく、英国の市場開放とともに交渉のカードとして保持しておくべきと主張、参加者は大きな拍手を送っていた。

リースモッグ議員のほかにも、マイケル・ゴーブ環境・食糧・農村地域相や、プリティ・パテル国際開発相らEU離脱強硬派で知られる議員らが積極的に各イベントに登壇し、穏健派を圧倒した。10月3日には、デービッド・デービスEU離脱相、リアム・フォックス国際通商相、ボリス・ジョンソン外相らも主会場で演説を行ったが、徹底した楽観論を展開し、英国の市場はEUにとっても重要で、交渉は成立するだろうし、万が一の場合も英政府には備えがあると主張した。フォックス国際通商相は「ブレグジットにもかかわらず(Despite Brexit)」といった表現はもうやめて、EU離脱による将来の機会に目を向けるべきだと訴えた。

テレーザ・メイ首相は10月4日の演説で、ブレグジットにも言及したが、その内容は9月に外遊先のイタリア・フィレンツェで行ったEU離脱交渉に関する演説(2017年9月25日記事参照)をほぼ踏襲する内容で、単一市場やEU関税同盟から離脱し、独自の関係構築を目指すと繰り返すにとどまり、直接ブレグジットに触れたのは1時間を超える演説のうち3分未満で、EUに対する清算金の支払いなどに関する言及はなかった。

広がる産業界と政権の距離

産業界では、英国産業連盟(CBI)や英国商工会議所(BCC)などが党大会中に数多くのサイドイベントを行ったが、EU離脱強硬派らが登壇するイベントに比べると空席が目立つものが多かった。CBIが主催したイベントでは、フィリップ・ハモンド財務相や、ダミアン・グリーン筆頭国務相兼内閣府相らEU離脱穏健派と呼ばれる閣僚も登壇したが、最長2年間の移行期間を設ける方向でEUと交渉する以上の発言はなく、産業界に対してはブレグジットがもたらす機会にも目を向けるべきだと訴えた。

リースモッグ議員ら強硬派は「市場を独占したい大企業の代弁者」とCBIを公然と批判、ジョンソン外相も演説で「ピンクの新聞(フィナンシャル・タイムズ紙)」が悲観的な報道をしていると批判するなど、産業界が期待する穏健なEU離脱を唱えることは保守党内では封印されたかのようで、政権と産業界の距離は急速に開きつつあるようだ。

エネルギー業界も数多くのサイドイベントを行うなど、盛んにロビー活動を行ったが、メイ首相は10月4日の演説で、エネルギー料金の値上げに上限を設ける方針を表明するなど、その声は届かなかった。

CBIのキャロリン・フェアバーン事務局長は主催イベントで、今の産業界の声を一言で言うなら「絶望(despair)」だと述べ、「英国に数々の試練があるのなら、政府は産業界に相談してほしい。一緒に問題を解決していきたい」と訴えた。

(佐藤丈治)

(英国)

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