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NAFTA再交渉は3カ国の協定継続が原則-在日大使館主催の「自動車産業セミナー」でカナダ側説明-

(カナダ、日本、米国、メキシコ)

米州課

2017年10月27日

在日カナダ大使館は10月24日、「自由貿易とカナダの自動車業セミナー」を東京で開催した。カナダ日本自動車工業会(JAMAカナダ)専務理事とカナダ大使館参事官が登壇し、日系自動車メーカーのカナダ経済への貢献や北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉でのカナダの立場や交渉の進捗について説明するとともに、研究開発拠点としてのカナダの魅力を紹介した。

日系自動車業界のカナダ経済への貢献を強調

JAMAカナダ専務理事のデイビッド・ウァーツ氏は講演で、カナダにおける日系自動車メーカーの生産・販売台数は年々増加を続けており、2016年の生産台数は前年比2.5%増の101万台で、販売台数も6.4%増の68万台と好調だったと述べた(2017年3月15日記事参照)。ウァーツ氏によると、日系自動車・同部品メーカーによる雇用者数は約8万人で、JAMAカナダが外部に委託した日系自動車産業の経済効果分析調査では、2016年の日系自動車・同部品メーカーの売上高は50億カナダ・ドル(約4,450億円、Cドル、1Cドル=約89円)に達し、日系企業が支出した失業保険・年金拠出や個人所得税支出は17億Cドル、輸入関税は12億Cドルになるとし、日系自動車産業のカナダ経済への貢献を強調した。

ウァーツ氏はまた、1989年に米国との間で発効した米加自由貿易協定(FTC)や、1994年にメキシコを加えたNAFTAの発効により、カナダの自動車産業に大きな変革がもたらされたと述べた。カナダの自動車生産台数は1989年の194万台から、1999年のピーク時には300万台に達した。日系自動車メーカーによるカナダでの自動車生産は1986年から始まり、2016年までに累計1,640万台の日本車が生産されたという。2016年にカナダで販売された日本車の76%はNAFTA域内(カナダ29%、米国36%、メキシコ11%)で生産されており、ウァーツ氏は、日本の自動車産業にとってもNAFTA域内での生産体制の確立は重要だったと指摘した。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

NAFTA再交渉におけるカナダの立場は「害を及ぼさない」

さらに、2017年8月から開始されたNAFTA再交渉におけるカナダの立場として、ウァーツ氏は「害を及ぼさない(Do No Harm)」とし、本協定は3カ国間の協定の継続が原則であり、カナダは自動車原産地規則(ROO)および全ての関連規定の維持を求め、他の輸出重点セクターのために自動車産業を犠牲にしない、原則として調印国が希望しない条項は盛り込まないことなどを挙げた。とはいえ、NAFTAの現代化は必要だとし、具体的には、ビジネス関係者の一時入国許可の職種リストの改定・拡大、関税および貿易促進条項の改定、国境インフラの改善に加え、自動運転車やデータ転送などの追加の枠組み協定の締結、カナダ自動車安全基準(CMVSS)と(米国)連邦自動車安全基準(FMVSS)の相互承認などの柔軟な規制協力、FTAを締結している共通の第三国を締結国の領域として一体に扱う交差累積(Cross-Cumulation)規則の導入などを例示した(2017年8月21日記事参照)。

NAFTA再交渉の進捗について、ウァーツ氏は「米国は極端な『アメリカ・ファースト(米国第一主義)』を求めている」と述べ、米国の具体的提案項目として、域内部品調達比率を2年間で85%に引き上げ、カナダとメキシコからの輸入品への関税即時撤廃(EIF)適用は米国製部材比率50%以上とすること、トレーシングの対象品目の拡大、第19条の紛争メカニズムの撤廃、カナダの乳製品の供給管理政策の廃止、協定の5年ごとの見直し、米国の政府調達へのアクセス縮小などを挙げた。ウァーツ氏は「カナダとメキシコは米国の要求を拒否したが、両国は今後も、米国と粘り強く交渉を続けていく共通認識を持っている」と語った。次回の第5回会合は2017年11月17~21日にメキシコ市で開催され、協議は2018年第1四半期まで継続する。

カナダ自動車産業のイノベーションを紹介

カナダ大使館参事官のドレア・クレメンツ氏は「カナダ自動車業の現状と将来」と題した講演で、カナダはビジネスコストがG7で最も低く、法人税率も米国より10ポイント以上低く、豊富なエネルギー資源や高度な人材を有しており、カナダがビジネスフレンドリーな投資先であることを強調した。また、カナダはNAFTAやカナダEU包括的経済貿易協定(CETA)などの協定により43カ国とFTAを締結しており、FTA締結国の名目GDPを合わせると40兆Cドルに達し、合計14億人の市場にアクセス可能な市場環境を整えていると述べた。

クレメンツ氏はカナダの自動車産業について、マグナ・インターナショナルやリナマー・コーポレーションなどの大手部品メーカーから家族経営の小規模サプライヤーまで、国内に700以上の自動車部品サプライヤーが存在し、カナダの自動車産業は五大湖周辺の世界最大の自動車産業クラスターに完全に組み込まれていると説明した。カナダでは、海外自動車メーカーとの次世代車の共同研究開発も活発に行われているとし、具体的な事例として、トヨタ・カナダ、メイプルソフト(本社:オンタリオ州)、ウォータールー大学による次世代環境車におけるモデルベース開発と制御に関する共同研究や、テスラモーターズとノバスコシア州立ダルハウジー大学のジェフ・ダーン教授のリチウムイオン電池の研究などを紹介した。さらに、カナダでは、水素燃料電池の研究開発も活発に行っており、パリ協定履行に向け引き続き、エネルギー対策や再生可能エネルギーの普及、ゼロ・エミッションの取り組みなどを進めていくとした。

3カ国がNAFTAの恩恵を受けられるよう努力との発言も

質疑応答では、NAFTA再交渉が万が一決裂した際に、カナダと米国との2国間FTA締結の可能性や、カナダの「環太平洋パートナーシップ(TPP)11」への取り組みについて質問があった。これに対し、カナダ大使館の公使は「カナダにとってNAFTAは非常に重要な協定であり、交渉ではカナダの利益を優先しつつも、引き続き3カ国がNAFTAの恩恵を受けられるよう交渉妥結に向け努力していく」と答えた。また、カナダはNAFTA再交渉が成功裏に終わることを見据えており、交渉が決裂した場合の代替策を議論するのは時期尚早と述べた。TPP11については、カナダ政府は交渉妥結に向けて積極的に関わっていくと発言した。

(飯沼里津子、中溝丘)

(カナダ、日本、米国、メキシコ)

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