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トランプ大統領、対イラン新戦略を発表-核合意の即時破棄は回避-

(米国、イラン、EU、ロシア)

米州課

2017年10月18日

トランプ大統領は10月13日、イラン戦略の転換を発表した。選挙期間中から「悪い取引(bad deal)だ」と一貫して批判し、離脱の可能性を示唆してきたイラン核合意について、その欠陥を立法措置で対処するよう議会に要請するとともに、2015年から停止していたイラン制裁措置を復活させるかどうかの判断を委ねた。ただし、議会や関係国との協議によっては、核合意破棄の可能性もちらつかせている。

イラン制裁措置復活の判断を議会に委ねる

トランプ大統領は、10月13日の対イラン新戦略発表演説で、2015 年イラン核合意審査法(INARA:Iran Nuclear Agreement Review Act of 2015)に基づき、イランが核合意(JCPOA、注)を適正に履行しているとかどうかの判断について、「認証できないし、しないだろう」と、2017年4月と7月の2度にわたり認証してきたこれまでの方針を180度転換した。また、イラン核合意の欠陥として、期限が到来すると核開発の制限が解除されてしまうサンセット条項や、イランの弾道ミサイル開発に対応していない点を挙げた。

核合意の履行を認証しなかったことにより、イラン制裁措置の復活の判断は議会に委ねられることになったが、トランプ大統領は、議会や同盟国と協力して解決策を導くことができない場合、「合意は破棄する」とも述べ、国際合意からの離脱の可能性に含みを持たせた。

関係各国や専門家からは懸念の声も

トランプ大統領は、対イラン新戦略のポイントとして、(1)イランによる地域の不安定化やテロ支援に対抗するため同盟国と協力、(2)テロ組織への資金援助を防ぐための追加制裁、(3)近隣諸国、世界貿易、航行の自由を脅かすミサイルや武器の拡散への対処、(4)核兵器開発につながるあらゆる道の否定、を挙げた。イラン核合意については、多くの深刻な欠陥に対処するため、政権幹部に対し、議会や同盟国と密接に連携するよう指示したとしている。なお、制裁強化の一環として、財務省は13日、イスラム革命防衛隊(IRGC)の関係者を特別指定国民(SDN)リストに追加したことを発表した。

トランプ大統領の判断に対して、イラン核合意の当事国である英国、ドイツ、フランスの各国首脳は10月13日に共同声明で、「国際原子力機関(IAEA)は、イランのJCPOA順守を繰り返し確認しており、米政府や議会はJCPOAの弱体化につながる措置を講じる前に、米国や同盟国の安全保障にどんな影響があるか考えてほしい」と自制を促すとともに、「イランの弾道ミサイル計画などに対しては懸念を共有する。米国や関係国と協力して適切な措置を講じる準備がある」と一定の理解を示した。

ロシア外務省は同日、声明で「攻撃的で脅迫的な発言は国際関係では受け入れられない」と批判し、「引き続きJCPOAにおける義務を果たしていく」と表明した。このほか、EUの外相理事会も10月16日、米国に自制を促す声明を出している。

イランのローハニ大統領は10月13日のテレビ演説で、「大統領が国際合意を無効にすることはできない」と述べるとともに、イランの国益になる限り核合意を順守するとあらためて表明している(ロイター10月14日)。

オバマ前政権時にイランとの交渉を担当した、コロンビア大学のリチャード・ネフュー上席研究員は「われわれはJCPOA崩壊に至る滑りやすい崖の上にいるようだ」と述べた。また、ブルッキングス研究所のスーザン・マロニー外交政策副部長も「認証取り消しは核合意の正当性を侵害し、徐々に崩壊させるだろう」と懸念を示している。

共和党を中心に立法作業が本格化

トランプ大統領の方針転換を受け米国議会は、INARAに基づき今後60日以内にイランに再度制裁を科すかどうか審議することとなる。

上院では、ボブ・コーカー外交委員長(共和党、テネシー州)が10月13日、外交委員会が国務省や国家安全保障委員会などと連携し、米国の義務を破ることなくJCPOAに関する超党派の懸念に取り組む立法戦略を策定してきたことを明らかにするとともに、法案の枠組みとなるファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。トランプ大統領が指摘したサンセット条項を取り除くほか、イランが核合意に関して一定の違反をした場合、自動的に制裁を科す内容となっており、今後2週間以内での法案提出を目指すとしている。

一方、上院外交員会で民主党筆頭理事を務めるベン・カーディン議員(メリーランド州)は「無謀な政治的決定で、米国の国家安全保障を直接脅かし、世界の舞台における信頼と評判を損なう」と、大統領の判断を厳しい口調で非難している。

下院では、エド・ロイス外交委員長(共和党、カリフォルニア州)やケビン・マッカーシー共和党院内総務(同州)らが10月13日に共同声明で、「イランとの核(合意)取引には重大な欠陥があり、JCPOAとは無関連の弾道ミサイルとテロ支援を対象とする制裁措置を強化する法案を可決する」としている。なお、同委員会は12日に、イラン弾道ミサイルおよび国際制裁強化法案(Iran Ballistic Missiles and International Sanctions Enforcement Act)について、本会議への修正案の報告を全会一致で決めている。

このほか、共和党上下院議員からは、今回のイラン戦略の転換について、賛同する声が上がっており、ポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州)やトム・コットン上院議員(アーカンソー州)らは、イラン合意には「欠陥(flaw)」があり、今回の大統領の決定を支持すると述べている。

一方、民主党では、ナンシー・ペロシ下院院内総務(カリフォルニア州)が米国の安全保障を脅かす「重大な誤り(grave mistake)」とし、他の議員からは、国際社会での米国の信用や将来的な外交能力の低下、中東の不安定化の助長などについて懸念や失望の声が聞かれた。

(注)2015年7月14日に、米国、英国、ドイツ、フランス、中国、ロシアの6カ国とイランが最終合意した「共同包括行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action:JCPOA)」を指す。イランの濃縮ウラン貯蔵量の削減や遠心分離機の削減など原子力関連の活動を大きく制限する代わりに、米国やEUが核関連の制裁を停止し、国連による制裁を解除した(詳細は2015年7月16日記事参照)。

(仁平宏樹)

(米国、イラン、EU、ロシア)

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