欧州議会が声明、2019年選挙に気をもむ-第2回ブレグジット交渉で「本格的交渉入り」と認識-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年07月27日

欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官〔英国のEU離脱(ブレグジット)交渉責任者〕は7月25日、欧州議会ブレグジット問題対策チームに第2回ブレグジット交渉結果について報告、「本格的交渉入り」したとの認識を示した。2019年半ばに欧州議会選挙を控える事情から、欧州議会側は「速やかに具体的協議を進める必要性」について言及。EUが、英国との将来関係に関する協議開始の条件とする「優先する重要課題についての十分な進展」の定義を明確にすべきだとの考えを示した。

2019年に選挙を控え、時間の余裕がない欧州議会

欧州議会ブレグジット問題対策チーム(座長:ギー・フェルホフスタット議員、ベルギー選出)は7月25日、欧州委のバルニエ首席交渉官と会談し、英国政府との第2回ブレグジット交渉(2017年7月21日記事参照)の結果についての声明を発表した。

これによると、7月17~20日の4日間、ブリュッセルで開催された第2回交渉は初めての本格的な交渉となったという。第1回交渉が「交渉体制・手法」をめぐる協議に終始したためで、今回は「何が本質的な問題で、詳細を詰める必要があるのか」について双方の意思確認が進んだとしている。

他方、交渉スケジュールでは、2019年5月もしくは6月に欧州議会選挙(注)を控える事情から、同議会側の認識は「われわれに許された時間の中で交渉を完結するとすれば、直ちに具体的な内容についての協議が必要だ。ただし、肝心なEU・英国の将来関係について協議できるのは、(1)双方市民の権利保障、(2)財政問題(英国の対EU債務履行)、(3)アイルランドと北アイルランドの国境問題、の交渉についての十分な進展が実現した場合だけだ」というもので、この3条件をめぐる従来の厳しい姿勢を崩していない。

3条件の「十分な進展」についての定義が必要

また、欧州議会ブレグジット問題対策チームは「何をもって、主要課題についての『十分な進展』と判断するのか(どうしても3条件全てのクリアが必要なのか)についての定義も明確ではない」との問題意識も持っているという。このため、「十分な進展」の定義を欧州議会として正式に、適切な時期に明らかにする必要がある、との認識で一致した。

さらに、欧州議会は3条件の中でも、最大の関心を「双方市民の権利保障」に向けており、完全な権利保障の実現を目指しているという。英国を含む全てのEU市民の基本権の保障がEUの使命で、その失敗は許されないというのが欧州議会の立場だ、としている。EU市民の基本権には「英国に暮らすEU市民(およびEUで生活する英国市民)の家族・親族交流」「包括的な健康・医療水準(の保障)」「生活地での選挙権(の保障)」「(年金受給資格など)社会的権利の移転可能性確保」「永住権(の保障)(例えば、永住権資格を保持した状態でのEU・英国間の再出入国の自由)」などが想定されると、欧州議会はみている。また、同時にEU市民に対する行政手続き対応の負担は軽減されるべきで、犯罪履歴照合などプライバシー侵害につながりかねない措置の導入は(ブレグジット交渉で)提案されるべきではない、との考えを欧州議会は示した。

(注)2014年5月に実施された欧州議会選挙では、2013年に各政党による次期欧州委員会委員長候補者の調整・指名準備や、政策論争キャンペーン(2013年9月)が始まった。次回の欧州議会選挙でも、実施のおおむね1年前からEU加盟国を巻き込んだ選挙関連活動が始まるとみられる。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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